「…快斗くん?何をしていらっしゃるのかしら?」
ぎくぅっ。
突如掛けられた声に、快斗はモロに身を震わせてしまった。…やましいことをしていますと言ったも同然だ。
「お、お早いお帰りで…ご入浴は手早いタイプですか、お嬢さん?」
「カッコつけてるつもり?…決まってないわよ、怪盗キッドさん。パジャマ忘れたからとりに来ただけ」
快斗――今はキッドだ――の台詞に、はにっこりと笑みを浮かべて言った。
「いーつーかーら、私の部屋に無断侵入するほど仲良しになったのかなー?」
「や、この建物、立地条件が良くてだな…警察撒くのにちょうどいいし、いつも窓開いてるし…」
言いながら、右手に持ったブツをどうしようかとIQ400の頭をフル回転させる。…させるが、どうにもこうにも逃げられそうにない。
(ええい、とりあえず話をそらせオレ!)
「てかさ、いつも開いてるってことは、もしかしてオレのこと待ってくれてるのか?」
「クーラー代がもったいないからです。秋になったら締めます」
「あ、そう…」
言いながら、快斗はじりじりと壁際に追い詰められていた。…が、少しずつ快斗の方へと寄ってきているせいである。
「右手に何か持ってるよね」
「え、あ…」
「何してたの?」
「だから…」
「ねえ」
「その…」


「怒らないから言ってみなさい」


その時だった。
ー!さっさとお風呂入りなさーい」
突然聞こえた母親の声に、は慌てて振り返った。
「…なんてなっ!」
「え?あ、ちょ、今の快っ…!」
ぼんっ!
目の前で巻き上がった白煙に、は思わず目を瞑った。
(しまった…!)
…時既に遅し。次に目を開いたときには、部屋はも抜けの空。夜空を白いハンググライダーが舞っていた。





「っふー、やべーやべー…けど…」
にやける顔を押さえられない。
反則だとは知りつつも、嬉しいものは嬉しかった。
「あんなこと書いててくれたなんてな…」





…その頃。
「ちょっ…うそぉぉぉ!?」
『もっとわかりにくいとこにしまっとけよ』

日記に貼りつけられた快斗の置き手紙に、は真っ赤になって絶叫したのだった。



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