着飾るのは得意ではない。 得意ではないけれど、それでもやはり、好きな人の前では少しばかり綺麗にしていたいと思う。 「頼久さん!」 「………神子殿」 いつものように、外に立っている頼久に声をかける。頼久も、いつものように軽い笑みで応じる。 …が、それだけだった。 「あのー…頼久さん……」 「はい、なんでしょうか」 「なんでしょうか、じゃなくってー…」 わかっている。彼が、悲しいくらいの堅物だということは。 それを承知の上で好いているのだから仕方がないとは思うのだが…。 (…別にさあ、髪を数ミリ切ったとかじゃないんだし。気付いてくれたって…) こんなに目につくものをつけていても、駄目なのだろうか。 「…頼久さん!」 「? 神子殿、何か……」 戸惑ったような頼久に、仁王立ちで応える。遠まわしじゃ駄目だ、もう直接言わなければ。 「どう?」 くるり、と。 その場で、一周してみせる。 「……お見事です」 「え、ほんと!?」 期待をこめた声色は、やがてすぐに落胆の色に変わった。…次の、一言によって。 「お見事な回転でした。軸もずれず、完璧です!」 「…………頼久さんの馬鹿!!もう知らないんだからっ!!!」 「みっ、神子殿!?私はまたなにか、粗相を…」 慌てて後を追ってくる姿は、まるで捨て置かれた子犬のようで。 「修行が足りません、よ?」 「……はっ!」 そうして馬鹿正直に返す様がまた、可愛らしくて。 結局私は、許してしまうのだ。 ---------------------------------------------------------------- |