「…大佐」 「いや、だから、これにはだな、山よりも高く海よりも深い理由が…」 あくまで冷徹に、射るような瞳で見つめられ、ロイは嫌な汗をだらだら流しながら必死に弁明した。 「これは正午までに仕上げる。確かにそうおっしゃいましたよね」 目の前の書類に軽く手を沿え、ホークアイはロイをちらりと見やる。 「いや、実はだな…その、なんていうか…眠りの妖精さんが肩を叩いて、私を眠りの世界へと誘った、というか…」 「嘘つきは泥棒の始まりと言います。大佐は罪人に成り下がったんですか」 ぴしゃりと切り捨てたホークアイの台詞に、ロイは無意味に髪をかきあげて言った。 「ふ…まあ確かに、君のハートを盗むと言う意味では泥棒かもしれないな…」 「失礼します。永遠に」 「わー!!冗談!冗談だから!!」 くるりと背を向けて立ち去ろうとしたホークアイを、慌てて呼び止める。 妖精うんたらはともかく、うっかり昼寝してしまったことは事実だ、謝らなければならない。 「その…悪かった。えーと、二時間、いや、一時間でいい。待ってくれないか?」 「本当に、終わらせてくださるんですね?…それならば待ちます」 わずかに疑念の思いを抱きつつも、ホークアイは首を縦に振った。 (よし、やってやるか) 気合いを入れてペンを手に取った時、トドメと言わんばかりに再びホークアイが口を開く。 「…嘘ついたら、針千本飲ませますからね」 「は…はいっ…!」 (あの目はマジだ…!) ロイが必死に書類を仕上げている中、ホークアイがハボックに軍部中の針を集めさせていたというのは。 …果たして、嘘か真か。 ---------------------------------------------------------------- 2004.7.17 BACK |