「……なに、してんだ?」
「んー?幸せ探してんの。」
そのやり取りは、言葉面だけだと大層怪しいものだった。





桜 幸せ 半分こ。







「桜吹雪の中突っ立って“幸せ探してんの”って、あぶねーやつみたいだぞ」
「うっさいなあもう。快斗黙ってて」
よっ、ほっ、とおかしな動きをしているを半眼で見て、快斗はため息をついた。
「…オレが悪かった。オメーは、なんで妙な踊りを踊ってんだ?」
「喧嘩売ってるの?」
ようやく動きを止めて、快斗を見やる。
「…桜の花びらをさ。地面に落ちる前に拾うと、願いが叶うって言わない?」
「…………願い、が?」
ひらひら、と。
舞い散る桜に視線をやる。
…随分と、簡単なことで願いが叶うものだ。
「例えば、この桜を、落ちる前に拾えたら例の宝石が見つかったりするのか?」
「もっとささやかなことを願うの!」
むぅ、と頬を膨らませ、再び花の舞い散る中に飛び込んでいく。
(…ささやか、ねえ。)
一体、どんなささやかな幸せを願っているというのだろう。
自分には興味のない事柄だったが、一生懸命なを見ていると、
「……なんだかなぁ。」
手伝いたく、なってしまうのだ。
「オレも探してやるよ、オメーの幸せ」
「えー、快斗は快斗の幸せ探しなよー」
「………。」
オレの幸せの横には、オメーにいてほしいんだと。
そんな一言が、気恥ずかしくて喉に詰まった。
「…う、わっ」

ザアアァァァァァッ。

一際強い風が吹き、ぶわっと桜の花びらが散る。

「あ、」
「おっ」

ほぼ同時に、とっさに手を伸ばして。

パシッ

「……………」
「……………」

互いの手のひらが、小気味良い音を立てた。
とっさに伸ばした手は、双方同じ花びらを狙ったらしく。
「…えーと」
「……これは」
動けずに固まったに、快斗はにっと笑った。
「こーいう場合、どーなるんだ?」
「……想定外です」
「ははっ」
すっ、と手を離すと、間に挟まっていた花びらが、一瞬の手のひらに貼り付いてから、はらひらと舞い落ちた。
「わっ」
慌てて、再びそれをキャッチする。
ぎゅ、と握り締めてしゃがみこむと、快斗が上から言葉をふっかけた。
「幸せ半分こ。だな?」
「………えー。」
不満そうに言いながらも、その声には違う色も混じっていて。
(…早速、幸せ効果か?)
再び舞い始めた桜吹雪の中、快斗は楽しそうに声を上げて笑った。




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