『人殺し』





うなされていた。
久しく見ることのなかった悪夢だった。
『この…人殺しが!』
『お前が…お前が殺したんだ…!』
『軍なんて、所詮は人殺しの集団か!!』
最初の頃は、ナイフで切りつけられるような痛みを覚えた。
今は、つらくない。
確固としたものが、自分の中にあるから。
…今見ているものが夢だという事が自分は分かっている。
“早く目を醒ませばいいのに。”
夢の中で自分は、ぼんやりとそんなことを思っていた。
…目覚めたとき、覚えていた言葉はたったひとつ。
『人殺し』
(…私は、どんな夢を見ていたの?)
軽く頭を振って起き上がる。目覚めが良かろうと悪かろうと、朝は来る。出勤時間も迫っている。
着なれた軍服の袖に腕を通し、髪の毛を頭の上で留める。コートをはおってから、
おもむろに鏡を見た。
大丈夫?
鏡の中の自分に問掛ける。そう、答えは決まっていた。
イエス。
最後に靴を履き、家を出る。
悪夢を見ても、ホークアイ中尉の朝はいつもと変わらなかった。
…自分で決めたこと。
“彼を守る”
そう。
そのためになら、私は『人殺し』でも構わない。
決意を胸に、守りたい人を守るために。
今日もホークアイは、引き金を引く。




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2004.3.20


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