自分にできる精一杯のお洒落をして、着飾って。
鏡の前で、深呼吸。
「……よし!」
気合一発。は、頬を叩いて家を飛び出した。





複雑に絡み合うと碧の電飾







「王崎先輩!」
待ち合わせの15分前だというのに、そこにいた人の名前を思わず大声で呼んでしまう。
「あ、ちゃん」
にこ、と笑顔のその人を前にすると、たちまち体温が急上昇してしまう。
赤くなってないよね、いや明らかになってるだろうけどもういいや!と半ば自棄で駆け寄った。
「先輩、すみません!お待たせしちゃって…」
「ううん。おれも今来たところだから」
「………っ!!」
常套句、だというのに。
その一言でまたのぼせる自分も、大概だと思う。
「えと、…行きましょう、か」
ぎこちなく、そう言って先に立っていこうとしたに「ちゃん」と王崎が呼びかける。
「は、はい!?」
「……今日の服、すごく可愛いね。」
ふわりと笑って、さらっとそんなことを言って。
固まっている隙に、「行こう」と、今度は手を絡めとられた。
「あ、」
「ほら、クリスマスだから。…許して、くれる?」
そんなこと言われて、NOなんていえるわけがない。
ああもう、本当に私駄目かもしれない。
早鐘を通り越して暴走機関車みたいになっている心臓を必死に宥めながら、はただただ首を縦に振ることしかできなかった。





「…綺麗だね、イルミネーション」
「そうですね…本当に、綺麗です。」
街にあふれる電飾の数々は、今の季節にしか見られないものだ。
最初にこのコントラストを考えた人は誰なんだろう、なんてどうでもいいことを考えてしまった。
そうでもしないと、繋がれた手に全神経がいってしまいそうだったから。
「単純に、レッドとグリーンっていう感じじゃないよね。…紅と碧。くれないっていう字、あるでしょ?あれと、海の碧色とかで使う碧。…そんな色が近いかなあ。」
「紅と碧……」
なんとなく、不思議だった。
赤と緑、といえばそれでおしまいなのに、そう置き換えるとまた違う色のように感じる。
この人の感性は、やっぱり素敵だな、と思った。
「……でも、1つだけじゃ魅力が半減してしまうと思わない?」
悪戯っぽい瞳が、を捕らえて。
「1つ…?」
「そう。…紅にしろ碧にしろ、お互いがいて、そうして一層輝いて見えると思うんだ。……おれは、ちゃんとそんな風にいたいな」
「え……」
繋がれたままだった手を、優しく引き寄せられる。
そして、抱きしめられたまま、声が甘く囁いた。
「…ずっと、一緒にいようね。そして、一緒に高めあっていこう。…きみの音色を、おれにもっと聴かせて?」
「おっ…王、崎、せ…」
「ふふっ、ちゃんは本当にかわいいね」
「ちょ、ま…!」
耳から爆発してしまいそうだ。
「大好きだよ。…メリークリスマス、ちゃん」
「………もう限界です〜〜〜〜っ!!」
の悲鳴に、王崎は楽しそうに笑った。
やっぱりちゃんはかわいいなあ、なんて追い討ちをかけながら。




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