入学式





入学式には、桜がつきものだ。
…だが実際には、その頃には既に葉桜の状態のものが多い。
ところがそれに反し、今年は今が満開。桜が咲き誇る中での、珍しくも貴重な入学式となった。






「ほおー。結構いるもんだね…」
きょろきょろと周りを見渡し、そう呟く少年が一人。ボサボサ頭の髪の毛は、それ自体が髪形となっていてだらしない感じはない。
「入試ん時こんなにいたっけか?───お、クラス発表だ」
そちらに向かって駆け出し、人込みの向こうを見やる。
「んー?…あ、オレB組だ」
「お前も?オレもだよ」
「へ?」
唐突にかけられた声に振り向けば、にこりと微笑む少年。一瞬面食らったが、すぐにその少年もにっと笑って言った。
「そっか。よろしくな!オレ、黒羽快斗ってんだ」
「オレは工藤。工藤新一」
「工藤か。よろしくな!」
「オレは服部平次言うんや」
『…は?』
唐突に割って入った声は、二人のうちのどちらが発したものでもなかった。
「オレもB組。1年B組や。よろしゅうな!」
そう言って笑った少年は、おそらく焼けたものではない色黒で…人懐っこい笑みを浮かべてそう言った。
「おう。よろしく!」
一方、3人がそうしている頃、やや離れたところで佇む少女が一人。
「…B組?1年B組、かー…」
どんな人たちがいるんだろう。高鳴る胸を抑えつつ、講堂へと向かう。
『ただいまから入学式を行います。生徒並びに保護者の皆様は、講堂のほうへ…』
響くアナウンスに、3人も講堂へと足を向けた。
『繰り返します。生徒並びに保護者の皆様は、講堂のほうへ…』

桜の花びらが舞い散る。

新しい生活が始まる。

何かが起こりそうな、そんな予感が胸を支配する、春。

…今、確かに何かが動き出そうとしていた。




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