授業中





こつんっ。

「…んー?」
頭に当たったのは、小さな紙切れ。





(…『工藤くんまでお願いします』?)
いわゆる「回し手紙」を見て、快斗は小さく眉を寄せた。
(誰からだよ…)
こっそり裏返して、快斗は思わず目を見開いた。
(…じゃねーか!)
ちらり、と見やれば、軽くウィンクしてくるの姿。
それは可愛いのだが、つまり「よろしくね」というサインである。
…冗談じゃない…。
(なんでオレがの手紙を工藤に回さなきゃいけねーんだ?)
軽く手を振って新一に手紙を投げた振りをしてから、快斗はこっそりと折り畳まれた紙片を広げた。
(『この前探してた時計、本当に新一の言ってたところにあったよ!さすがだね。なんかお礼するよ。なにがいい?』)
「な……なにぃぃいぃぃいっ!!?」
それを読み、快斗は思わず絶叫して机を蹴り倒して立ち上がった。
…授業中に。
「…黒羽…」
「え?あ、げっ」

すこーんっ。

綺麗に軌跡を描いたチョークは、快斗の頭にクリティカルヒットした。





「おーい、黒羽ー、昼休みだぞ?」
新一が弁当片手に快斗の頭を叩くが、快斗はうつぶせたまま顔を上げない。
(いつの間に名前呼び…?のおぉお…)



新一…



新一…



新一…!!



「しんいちぃっ…!」
それを聞いて、新一は二、三歩あとずさった。
「…いや、突然切な気な声でンなこと言われても。悪いけどオレ、そっちのケないし」
それを聞いて、快斗は飛び上がった。
「オレだってねーよ!!つか何の話だ!?」
「…ち、違うんだな…」
「…新一と黒羽くんてそーゆー関係なの?」
突然割って入った声に振り向けば、そこにいたのは…
「なんだ、か」

「ぎゃーーーーーー!!」



って言った…!



っ…!?



「違うって。黒羽がちょっとおかしくてな」
「へー。ところで新一、授業中に回した」
「待て待て待てー!!」
完全に快斗を無視して進められていく会話を遮断し、快斗は急いでの正面に回った。
「オレも!」
「…は?」
「オレも、って呼んでいいか!?」
「…う、うん…?」
わけがわからず、頭に疑問符を浮かべまくっているを見て新一が吹き出した。
「…なぁ工藤」
いつのまにやら側に来ていた服部が、新一同様笑いながら声を掛けた。
「ああ、そうだな」
そして、声をハモらせて同時に言う。
『アイツわかりやすすぎ。』
が新一呼びになったのは、単純に蘭の呼び方が移っただけである。
新一も然り、だ。
「じゃーオレのこと、快斗って呼んでくれよな!」
「はぁ…か、快斗…?」
「っしゃあ!」


…回し手紙を読んだことがバレ、にぶっとばされるのはそれから数分後。



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