「あーもーうるせー!!」 ガチャンッ、と受話器を叩き付け、ハボックが毒付いた。 「…どーかしたか?ソレ、例の外からの直通電話だろ?」 ペンを走らせながらブレダが言う。 「…今日だけで13人目だ…」 うんざりと言ったハボックに、ブレダも察したらしい。 「何がいいんだかわかんねぇな」 そう返すと、再び視線を戻した。 『市民の声をもっと積極的に取り入れよう』 ということで、試験的に取り入れられた外部直通電話。大々的に報じられただけあって、連日鳴りっぱなしの大盛況なのだが…。 「…九割が大佐へのラブコールときたもんだ…」 めでたく“直通電話”の係となったハボックは、げっそりとして言った。 「ま、あと三日ですから。頑張ってください」 「いつでも代わるぜー、曹長?」 にこりと笑って言った曹長に、怖い笑みを浮かべて言う。 「ところで、肝心の大佐はどこですか?中尉の姿も見えませんけど」 「…そーいやどこ行ったんだろーな?」 「…何をしてらっしゃるんですか?」 「やぁ、見付かってしまったな」 「罪の意識が欠片も感じられないのですが」 裏庭の大樹の下。一通り探しても見付からないときは、ロイは大抵ここにいた。 「悪いとは思っていないさ。今日の業務は全て終わらせた」 そう言って、ロイは面白そうにホークアイを見つめた。 「君こそどうしたんだい?私の業務が終わっていることは知っているはずだが」 「……!」 まず、い。 「私…は、その…」 「…例の電話。あれを聞きたくなかったから…だったり?」 「なっ…」 直球で来たロイに、ホークアイはとっさに言葉に詰まってしまった。それを見て、きょとんとしたのはロイである。 「…だったらいいな、と思っただけなんだが…いや、まさか本当に…?」 「…失礼しますっ!!」 がばっ、と頭を下げると、ホークアイはそのままものすごいスピードで立ち去った。 「な…ちょっ、待ちたまえ!!」 頭を下げる、その瞬間。ホークアイの顔が、ほのかに赤らんでいるように見えたのは自分の気のせいだろうか。 (…本当に…?) 正直、自分としても面倒で仕方なかったあの電話。それが嫌で、普段ではあり得ないスピードで仕事を終わらせ、抜け出してきたというのに。 「こら、待てと言っているだろうが!」 …あの電話に、礼でも言うべきだろうか。 満面の笑みで、ロイはホークアイのあとを追っていった。 「ハボック少尉、先ほどから電話が全然鳴りませんけど」 「抜いた」 アレ見たらアホらしくなってな。 窓の外を指差し、ハボックは抜いた電話線をひらひらさせながらそう答えたのだった。 ---------------------------------------------------------------- 2004.6.26 BACK |