久々に二人揃って迎えた休日。
家でのんびりしてもいいし、足りない家財道具を買い足しに行ってもいい。
ああ、そういえば気に入りのカップを割ったと嘆いていたから、代わりのものを買いに行ってもいいだろう。
そんなことを考えながら居間に踏み込み、赤井は足元に転がっているものに蹴躓いた。
「寒い……」
「………あのな」
転がっていた“もの”、…布団に包まったの呟きに、赤井は深いため息をついた。





Sulky lovely girl.







「いい加減に布団を放せ!なんだこのザマは!!」
「やですー!寒いんですっ、ヒーターじゃ足りません…!」
布団をひっぺがそうとする赤井に抵抗し、ぐぐぐと布団を押さえるもやがてころんと転がり出る。
「ひいいい寒いいいいいい!!」
ヒーターの前に行き、膝を抱えて丸くなったに赤井は頭を抱えた。
「…確かに今日は寒い。寒いが、それじゃあ何もできないだろう」
「何もしないからいいんです」
(………?)
ここに至って、赤井は疑問符を浮かべた。
確かには寒がりだ。それはよく知っているが、ここまでひどくはなかった。
それに、二人揃って迎える休日などそうそうないことは承知の上のはずだ。
だというのに、「何もしないからいい」とは。
(………ははあ)
これは。
ふ、と笑みを浮かべると、膝を抱えたままのの後ろに回りこみ、赤井はそのままを抱きしめた。
「ちょ、きゃあああ!?しゅ、秀一さんっ…!?」
「寒いんだろ?」
「そ、それはそうだけど、でもっ…!!」
膝を抱えた体勢で抱き込まれては、抵抗のしようもない。
耳まで真っ赤なのは、ヒーターの目の前にいるからなのか…それとも。
。……いつまでそうしてヘソを曲げているつもりだ?」
「え」
ぎく、と小さく肩が震えたのを見逃す赤井ではない。
腕に込める力を僅かに強くして、そのまま言葉を続ける。
「……ずっと、家に帰れなかったからな。寂しかった、と素直に口に出せないお前は、そうして拗ねて、俺の気を引こうとしているわけだ」
「そ、んなんじゃ…!」
わざと引っかかる言い方をしてやれば、案の定かっとなったがこちらを見上げてくる。
「……っふ、」
…そうして上向いたその唇を、優しく塞いでやる。
抱え込んでいた両腕は解放し、…そっと抱きしめ、頭を撫ぜて。
「悪かった。……ご機嫌を直してくれないか、お姫様」
「…姫、なんて思ってないくせに……」
真っ赤な顔をしたまま、ぼそりと呟いて。
力なく振り上げられた拳は、軽く赤井の胸を小突いて下ろされた。
「なんで、わかっちゃうんですか」
視線を逸らして小さく呟いた声に、赤井は笑みをこぼした。
「そりゃ、のことだからな」
「…理由になってないんですけどー」
これ以上言っても埒が明かないと思ったのだろう、それきりは黙り込んでしまった。
「……今日の予定なんだが」
「………」
「家財道具を見に行ったり」
「………」
「この前割ったカップの代わりを探しに行ったり」
「………」
「……しないで、家にいるか」
苦笑しながら言って、ぽんぽん、と優しく頭を叩いてやる。
「…………その方向で、お願いします…」
恐らくは真っ赤な顔で、下を向いたまま、ただそれだけ言って。
「仰せのままに?」
ちゅ、とその額に口付けて。
「……今日はずっと、一緒にいよう。寒いなら、離れなければいい」
そう囁くと、赤井は一度は解放したを、再び腕の中に閉じ込めた。




----------------------------------------------------------------
BACK