狸寝入り





「失礼します」 かちゃり、とノブを回して中に入る。ノックをしても返事が返ってこなかったので、いないのかと思っていたのだが。
「…大佐?」
机の上に見える、こんもりとしたふくらみは…
「寝ていらっしゃるんですか」
返事はない。
規則正しく上下する背中を見て、ホークアイは珍しく微苦笑をもらした。いつもならすぐにでも起こして仕事を始めさせるところだが、今日は特に過密スケジュールだった。
(たまには…)

寝させてあげても。

そっと、ロイの耳元に口を寄せ、言う。
「…大佐。一時間したら、また起こしに来ますから」
椅子にかかっていたコートを、ロイの上にかけて。
「失礼しました」
律儀に礼をして、部屋を出ていく。
「…何をやっているんだ、私は…」
ホークアイが出ていくのと同時に、ロイが片肘をついて起き上がる。
その顔は、ほんのりと朱に染まっていた。




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2004.3.13


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