単調な列車の音。 延々その繰り返しの中にいると、寝不足でなくても眠気を覚える。ましてや疲れを伴っているのなら、尚更だ。 「…中尉。私は少し寝るから、着いたら起こしてくれないか」 「わかりました」 軽く頷き、了解の意を示す。 彼女に任せておけば、大丈夫だろう。 ロイは、顎を手の甲にのせ、瞬く間に夢の世界へ落ちていった。 がたんごとん がたんごとん …キキィーッ 「……っ」 どれ程たったのか。ロイは、列車のブレーキ音で目を覚ました。 「今はどの辺りだ…」 窓から景色を見やる。そして目を点にした。 「…おい、中尉…」 唖然としたロイがホークアイに声をかけると… (…!珍しいな…) 列車の魔力だろうか。 普段、決して人前で寝ることはない彼女が、静かに寝息を立てていた。貴重なものを見た、などと感心している場合ではない。ロイは慌ててホークアイを起こしにかかる。 「中尉…中尉!起きろ、ホークアイ中尉!」 軽く肩を揺さぶると、ホークアイははっと目を開け、ロイを見た。 「…っ!申し訳ありません!」 「いや、いいんだ。それより早く支度を整えろ。降りるぞ」 「…え?」 「相当の数を寝過ごしてしまったらしい」 それを聞き、ホークアイも慌てて窓の外を見る。…ロイと全く同じ表情、つまり唖然としてかたまった。 「さぁ、早く…」 がたんっ 『あ』 がたん…ごとん …がたんごとん… 思わず顔を見合わせる。 「…大佐…」 ロイは、自分が座っていた席にドカッと座り直した。 「…仕方がない。窓から飛び降りるわけにもいかないし…とりあえず次の駅まで」 そこで区切り、にやりと笑って言う。 「車窓から見る景色でも楽しもうか」 「そう…ですね…」 延々と続く、なにもない、だだっぴろいだけの荒れ果てた土地。それを見ながら、ホークアイはなんとか同意の旨を唱えた。 「…中央に行って帰ってくるのにどんだけの時間つかってんスか」 「まぁそういうな。私がいなくてもお前達なら立派に仕事をこなせると信じているよ」 「…誤魔化してません?」 「いやいや」 貴重なものを見られたのだから。 あの時間は、決して無駄ではなかった。 ロイは一人、ほくそ笑んでいた。 ---------------------------------------------------------------- 2004.3.14 BACK |