「街を歩くのは久しぶりだろう?」 「そうですね。名目は視察ですが…良い気分転換になります」 『たまには視察に出てみないか』 ロイは、日頃世話ばかりかけているホークアイに、労いの気持ちを込めて街への視察を提案した。無論、気分転換の意味を多分に込めた上で、だ。 「…ここが私たちが守っている街なのだな。幸いにも…人々は、軍服姿の我々を見ても笑顔を消さないでいてくれる。…だが」 「そうですね…軍を毛嫌いしている人々もいます。中には攻撃を仕掛けるものすら…難しい問題です」 ロイは一瞬、言葉に詰まった。毎度のこととはいえ、自分の考えを先読みされては苦笑せざるを得ない。 「私はそんなに分かりやすい男かな」 「あら、すみません。気分を害されましたか?」 すみませんなどと欠片も思っていない表情で言う。ロイは大仰に手を広げ、やれやれとつぶやく。 「有能な部下を持つと苦労するよ」 「お誉め頂き光栄です」 「まだ時間があるが…どうする?もう戻るか?」 ちらりと横目でホークアイを見やる。ほんの一瞬、考える素振りを見せてから…ロイを見ていった。 「…もう少し、歩いていたいです」 それを聞いて、ロイは満足そうに頷いた。 「そうか。それじゃあそうしよう」 穏やかな街並み。 その通りを、二人はのんびりと歩き続けた。 ---------------------------------------------------------------- 2004.3.21 BACK |