「中尉、今度の休みにデートしないか?」
「嫌です」

それは週末、時折見られる光景。



<< 05. 浮き名 >>



「何だ、つれないな。たまには上司の休日に潤いを与えてやろうとは思わないかね?」
「思いません。大佐なら、声をかければひょこひょこついて来る女性の一人や二人、簡単に見つかるでしょう?」

おどけた様子のロイに対し、リザの口調は素っ気ない。
それはロイが半ば中尉をからかっているからでもあり、リザがそれに慣れているからでもある。
どちらにしても、お互いそれなりの絆がなければ成り立たない空気が、そこにはあった。

「いやいや、靡かない女性を落とすのが醍醐味なのだよ」
「…まったく」

これ見よがしにため息をつき、リザはちらりと隣に並ぶ横顔を見やる。
年の割には幼く見える秀麗な顔立ちが、今はどことなく楽しげな表情を浮かべていた。
彼が自分にちょっかいをかけてくるのは面倒な事ではあったが、逆にそれを嬉しいと思う自分がいる事もリザは自覚している。
ただそれを認めるのは、口に出すのは悔しいから。
わざと冷たい、ふりをする。

「大体私は…大佐の武勇伝の一つに加えられるのは嫌ですから」

おびただしいロイの女性遍歴、その中の一つとして名を連ねたくはない。
できるならば、多数の中の一人ではなく『唯一の』一人でありたかった。

「武勇伝…なかなか上手いことを言うな、中尉」
「…反応すべきところはそこですか?」

上手くはぐらかされたような気がしないでもなかったが、リザは気にしないことにした。
そんなことに気を揉んでいたら、とてもじゃないがロイの部下は務められないから。

「時に中尉。甲斐性のある男とない男、どちらが好みだ?」
「は?」
「いいからいいから」
「…はぁ…」

いまいち質問の意図が読めないが、そんなことは日常茶飯事。
心の片隅に疑念を残しながら、それでもリザは素直に応える。

「ある方がいいに決まっている、とは思いますが」
「だろう?」

途端に得意げになるロイに、リザはますます困惑の念をしかめる。
眉根を寄せて考え込むリザを、ロイが瞳に悪戯っぽい輝きを湛えて眺めていた。

「浮名の一つもないようでは、逆に甲斐性がないじゃないか」
「………………………………」

してやったり、という表情のロイを呆れて見やるしかできないリザであった。
時折こんな風に、ロイはひどく子供っぽい言動をする。
ただ…ロイがそんな顔をするのはリザの前だけだとは、まだ彼女は気付いていなかった。

「…馬鹿なことを仰っていないで、早く仕事を終わらせてください」
「あ、やっぱダメ?」
「駄目です」
「仕方ないか…」

あっさり頷きつつも、ロイはどこか淋しげであった。
それが演技であることをリザは知っていたが、それでも無視できないのがリザの弱さかもしれない。


「…早く終わらせたら、食事程度になら付き合いますから」


ロイがどんな反応を見せたのかは、最早言うまでもない。




ロイの武勇伝にリザの名が加わったのか、それとも別の存在になったのか。
…それはまだ、誰も知らない、未来。








何と言うか…ロイ←アイになっちゃいました。
ロイ→アイの予定だったんですけど…(苦笑)
[04/05/26]


【ウタノより】
うわあうわあうわあ…!!
PCの前でどうしようもなくにやけてしまいました…!
唯我さんの書かれるロイはなんでこんなにツボにきてしまうのでしょうか。
なんでリザさんこんなに可愛いんでしょうか。
こんな素敵ロイアイ頂いてもうなんて言うか感謝感激雨霰です…!!
本当にどうもありがとうございました!