「ジェームズ・ポッター!また貴方ですか!」 響き渡る声には、怒りというより呆れの方が色濃く出ていた。 「何度言わせれば気が済むのですか?指定時間外に飛んではいけない、と。…まさかまた何か企んでいたんじゃないでしょうね?」 「…すみません、先生」 そうしおらしく謝ったのは、まだ幼さの残る少年――彼がジェームズ・ポッターだ――だった。 「僕はただ…空と自分との距離を縮めたかっただけなんです…企むだなんて、そんな!」 「…怪しいですね…。今日こそはダンブルドア校長に叱って頂きますよ」 「えー!!」 「さぁ、ついていらっしゃい」 「また君か、シリウス・ブラック。今何時だと思っている?今度は何をやらかす気だ」 「いやぁ、月が綺麗で…罪なのは俺じゃなくて、美しすぎる月です」 いけしゃあしゃあと言ってのけたのは、やはりこちらもまだ幼さが残る少年――シリウス・ブラックだった。 「君には一度、がつんと言う必要があるようだな…ついてこい、校長先生のところへ行くぞ」 「げ…マジ?」 「ここで待ってろよ。校長先生が直にいらっしゃるからな」 「へーい」 ぐるりと見回すと、歴代校長の写真が皆そろってシリウスを見下ろしていた。…全員、すやすやと眠っていたが。 「…君も?」 「うおっ!?」 唐突に聞こえた声に慌てて振り向けば、不死鳥が一羽。 「…不死鳥って喋ったっけ?」 「あっはっは!君、おもしろいなぁ。ここだよ、ここ」 「は?」 籠の後ろからひょっこりと顔を出した相手を見て、シリウスはきょとん、として間の抜けた声をあげた。 「君も、ダンブルドアに叱られるのか?」 その少年――先に連れてこられていたジェームズは、そう聞いた。 「あぁ…君も、ってお前もか?何やったんだ?」 そう聞くと、「よくぞ聞いてくれた!」と言わんばかりの笑みを浮かべ、ジェームズは喜々として語り出した。 「実はさ、三階の端にクソ爆弾を地雷として設置してたんだ!それを誰か踏んでないか、外から確かめようとしたら見付かっちゃって」 「…へぇ?」 おもしろそうにそう返したシリウスに、「君は?」とジェームズが聞いた。 「俺か?俺は、明日授業で使う薬草に軽い仕掛けを…」 「…仕掛け?」 笑みを含んだ声でそう聞き直したジェームズに、シリウスもにやりと笑って答えた。 「そう、仕掛けだ」 「明日が楽しみじゃないか」 「お前の方のクソ爆弾もな。スリザリン連中が踏めばいいんだけど」 ひとしきり笑いあった後、シリウスがふと思い出したように聞いた。 「お前、名前は?」 「僕?」 無駄にふんぞり返り、小さく咳払いをしてから重々しく言った。 「未来の帝王、ジェームズ・ポッター。…君は?」 ちらり、と投げ掛けられた視線を受け、シリウスも同じく重々しく言う。 「未来の皇帝、シリウス・ブラック」 それを聞くと、ジェームズはおもしろそうに口の端をつり上げた。 「…へぇー」 それに呼応するかのように、シリウスも小さく笑う。 「…ふっふっふ」 「…はっはっは」 がしっ!! 手を差し出したのは、同時だっただろう。がっちりと手を組み合うと、やはり同時ににやりと笑って言った。 「…シリウス」 「…ジェームズ」 「「よろしくな!!」」 「…とりあえず」 「逃げますか?」 ―――最強コンビ、ここに誕生。 ---------------------------------------------------------------- 鹿と犬のコンビって大好きです。 この2人の友情がたまらなく好きなんです。なんかもう自分の中で特別な感じ。こんな風に出会ってたらいいな〜…とか思って形にしてみました。もちろんダンブルドアは気づいているんですが、見逃してくれるんですよ(笑) 私の中では、学生時代はこの2人を中心に動いてる感じです。 BACK |