戦え!ポタレンジャー





「かくかくしかじかと言うわけで、僕らはポタレンジャーを結成することになった。言うまでもないことだが、もちろんレッドは僕だ」
唐突なジェームズの台詞に、一同は暫し固まった。
「…はーい」
「何かね、シリウス君」
ひらひらと右手を挙手したシリウスに向かって、意味もなく偉そうにジェームズが返す。
「とりあえずツッコミどころが大過ぎなんですけどー」
「順番にツッコミたまえ」
「日常会話ではかくかくしかじかじゃ会話は成り立たない」
「…どう考えても一人の名前で構成されてるポタレンジャーって何?」
「ジェームズがレッドっていうのはどういう意味?」
シリウス・リーマス・ピーターのツッコミを受けてから、ジェームズは満面の笑みで答えた。
「夢を見たんだ!」
『…夢ぇ?』
「そう…夢、ドリーム、ファンタジー!」
そこまで言うと、ジェームズはうっとりとした夢見る少女の目眼差しで続けた。
「僕がヒーローになって、敵をばったばったと倒す夢さ!これはもう実践するしかないと思ってね…」
「…いわゆる戦隊モノか?けど、あれって普通五人組だろ?一人足りないじゃねーか」
「ちっちっち、シリウス君。誰か忘れていないかい?」
人指し指を顔の前で振り、軽くウィンクして言う。
「…あぁ、あいつか。でも、どうやって」
シリウスが全てを言い終える前に、ドアがすごい勢いで開いた。
「ポッター、貴様ーっ!!」
「やぁセブルス。何か急ぎの用事かい?」
にこやかに応対するジェームズに掴みかからんばかりの勢いで、スネイプは一気にまくし立てた。
「何か用事か、だと?よくもいけしゃあしゃあとそんなことが言えるな。我輩の布団の中にカエルチョコを敷き詰めたのは貴様だろう!」
「あ、それ俺だ」
椅子を傾けバランスを取りながら、シリウスがあっさりそう言った。
「…!!じゃあ、我輩がさっき飲んだコーヒーに飽和状態を越える砂糖をいつのまにか入れていたのは」
「僕でーす」
笑顔のまま、リーマスが挙手する。
「おいしかったでしょ?」
「ふざけるな!かきまぜたら底の方で砂糖がじゃりじゃりいって、飲める状態ではなかったぞ!」
「まぁ結局さ、別に呼ばなくても来るってこと」
そう言うと、ジェームズはスネイプに向きなおって「君はブラックだ」と言い放った。
「ちょっと待て!ジェームズ、ブラックは俺だ!なんでスネイプなんだよ!」
もはや『ホグワーツに敵なんていない』とか『アホすぎる』という考えは吹き飛んだらしい。“色”をめぐって壮絶な戦いが始まった。
「スネイプなんかなぁ、夏の腐った沼地の色だ!それで十分だろ!」
「…ちょっと待て。わけもわからず巻き込まれるのだから、せめて主役のレッドにしてもらおうか」
バチバチと火花を散らせる二人の間に、ジェームズが割って入って言う。
「まぁまぁ落ち着いて。レッドはほら、僕だし」
『ちょっと待て!!』
…今度はハモったことが気に入らないらしい。またも睨み合いを始めた二人は放っておくことにして、ジェームズはリーマスとピーターに向き直った。
「リーマスはホワイト、ピーターはイエローでいい?」
「うん」
「別にいいよ」
「ピーターはカレーが大好きな設定だ。口からカレーを噴出して敵に当てる練習をしろ」
「ちょっと待ってー!?なんかそれいろんなキャラが混じってるよ!!」
「問答無用。それとシリウス、君はグリーンにしよう」
「決定かよ!」
いまだ睨み合いを続けていたシリウスにあっさりそう言い放つと、ジェームズはそのままさも当たり前のように続けた。
「グリーンは緑色のウ●コをするんだぞ」
「おい!!それって全くいらない裏設定だろうが!!!」
だが、ジェームズはなんてことを、とばかりに目を見開くと、さらに続けた。
「様々な裏設定があってこそ物語は面白くなるんだ!例えば僕」
「…ジェームズにもあるの?」
不思議そうに聞き返したリーマスに、ジェームズは自信たっぷりに頷いた。
「もちろんだ!…見てろよ、僕はビームを出す!!」
『ビーム!?』
「ジェームズビィィィム!!」

ちゅどーん!!

「わー!!ちょっと待てなんで耳から出るんだよ!!」
「ああっスネイプとピーターが焦げてる!ジェームズ、普通目からだろ!?」
「ちょっと待てそーいう問題か!?それに耳からじゃ正面の敵に当たらないだろ!!」
「何言ってるんだよ、目から出したらメガネが割れるだろ!
ところで助けてくれ、ビームが止まらないんだ!!」
『うわぁぁぁぁっ!!?』

どっかーんっ!!!





…チュンチュン

がばっ!!

「…素晴らしい夢だ…!おい、起きろシリウス!!」




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