【薄幸】
不幸せ。不運。不幸。逆から読めば幸薄い。





「あれ見てれば分かるって?」

眉をひそめて聞くエドに、ハボックは自信満々に答えてきた。

「まあ、そーいうこった。言うほどモテない男ってのはいつの世にもどんな世界にもいるんだよ。

俺が睨むに、跡部や悟浄、真希に弥勒、あのへんみんなそーだ」

「…誰?」

「気にするな」

あくまでひそひそと、柱の陰に隠れての会話である。アルは特に興味がないらしく、

後ろにちょこんと座っている。

『薄幸ってどんな人?』というエドの疑問を聞いて、ハボックが連れてきたのがここである。

「…あ、来た」

…前から来るのは、ロイとホークアイの二人だった。

更に、反対方向から女性軍人の二人組が歩いてくる。

「やぁ、ご苦労様」

ロイが、対女性用の爽やかな微笑みで挨拶する。ホークアイも軽く会釈して立ち去った。

「…で?」

だからなんなんだ、と不満そうに言うエドに、ハボックは黙って先ほどの二人組を顎で示した。

きゃあきゃあ言っているのを聞き取れ、ということらしい。

(どーせあのクソ大佐と挨拶して浮かれてんだろ?)

そう思いながら耳を傾けると、…なんだか様子が違う。

「ちょっとどうしよう、挨拶しちゃったーv」

「みんなに自慢しちゃおうよ!」

「あー、やっぱり素敵だなー…」

「ねー!」

『ホークアイ中尉v』

「マスタング大佐にはもったいないよね!」

「そうそう!」

そのままきゃっきゃと立ち去った二人組を見て、エドはゆっくりとハボックを見やった。

「…あれが実際のところなわけ?」

「そう。そしてあれが、薄幸だ。気付いていないから哀れなんだよな」

うんうん、と勝手に納得しているハボックを横目に、エドは傍観を決め込んでいたアルに話しかけた。

「…アルー」

「うん、ボクもそう思うよ」

エドの考えを先読みし、アルが同意する。

あれは、薄幸というよりも。

「かわいそうな人だよな…。」



…彼がその事に気付く日は、まだ来ない。






2004.5.23


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