昇降口で、先に教室を出たはずの新一を見つけた。空を見上げ、ちょっとどうしようか迷っているようだ。…無理もない。その手にもっているのは学校鞄のみ、なのに外は雨が降っているのだから。 「新一?傘、持ってないの?」 「ん?あぁ。まぁ、これくらいなら濡れて帰るから大丈夫だよ」 「このくらいなら、って…」 同じく空を見上げる。…とりあえず、傘を差さずに歩けるレベルではないのは明白だった。 「ほら、私の傘、深緑だし。男の子が差してもおかしくないから、貸してあげる」 「…オメーは?」 「教室に置き傘が、」 あるからいいよ、と言って引き返そうとすると新一が腕をつかんで止めた。 「…一緒でいいんじゃねーの?」 この傘、結構幅あるし…そう言った新一に、かっと頬が高潮する。…それは、つまり、世に言う。 「相合傘、なんて洒落た呼び方もあるけどな。…別に、いいだろ?」 軽く視線を逸らしながら言った新一に、反射的に頷いてしまった。それを確認して、新一がぱんっと傘を広げる。 「じゃ、帰るか」 「あ、うん。いいよ、私持つから」 「バーロー、身長的にオレが持ったほうがいいだろーが」 雨の中に駆け出す影は2つ。…傘は1つ。 …雨の日は、いつもよりちょっとだけ、近くに寄り添うことが出来る日。 ------------------------------------------------------------ (お題配布元→コナン夢普及委員会) |