ピッ ピッ 「…お、もう満腹か?よく食ったなー」 「………快斗?」 「おぎゃ―――――っ!!!」 唐突に頭の上から降ってきた声に、快斗は絶叫した。 「っ……てめぇっ……!」 「おぎゃーって、そんなに驚かなくたっていいじゃない」 よっこらしょ、と快斗の横に腰を下ろし、が膝を抱えながら言う。 「驚いたんじゃねえ!オレは、見られたかと…」 「…何、を?」 にやにやしながら言ったに、快斗ががっくりとうなだれる。見られた、ぜぇぇったいに見られた。 「…誰にも言うなよ?」 「りょーかーい。」 快斗が渋々手渡したものを、が喜々として受け取る。卵を思わせる丸いフォルム、真ん中の画面と、操作する三つのボタン…。 「懐かしいなあ、たまごっち」 画面の中の小さな生きものを見て、ふふふと笑みをこぼす。昔流行ったものが、今また再ブームを起こしているのだ。 「この前、男友達三人で、この夏最後の祭りに行ってきたんだよ。そこの射的で、新い…つってもわかんねーか。仲間の一人が撃ち落としたやつをもらったんだ。せっかくだからやってみようかと思ってさ」 ふてくされたように言う快斗が、なんだか妙に可愛らしい。しばらくボタンをいじくってから、快斗に返す。 「別にいいんじゃない?私も昔は二つ持ってたし。…押し入れの中探してみようかな」 久しぶりにやりたくなっちゃった、とが笑いながら言うと、快斗がポケットから何かを取り出して放り投げた。 「うわっ!?」 慌ててキャッチをし、手の中のものを見る。 「…たまごっち?」 「やるよ。二つもらったんだ」 ひらひらと手を振りながら背を向けた快斗に、が満面の笑みで言う。 「ありがとう!」 「可愛がってやれよなー」 ピピピッ 「あっうんちしてる!」 「流せ流せ!」 「あんまりごはんあげすぎないでよー、不良にするんだから」 「あっテメ、勝手にいじんなよ!」 …それからしばらくの間、とある高校の某クラスでは、たまごっちが大流行することとなる。 ------------------------------------------------------------ |