たまに、





たまに、たまに、とてもたまに、すべてを放り出してしまいたくなる。何もかもぶん投げて、一人旅に出たくなる。けれど、それをできない小さな、臆病な自分は、今日も変わらず歩いていく。
「それは違うな」
違う?何が?
「小さいとか、臆病とか」
…だって、そうでしょう?
「オレはそうは思わない。オメーが言ってるのは、逃避だろ?逃げられないことが、臆病?」
それ、は…
「…違うだろ。逃げないこと、それが勇気だ。オメーは間違ってなんかいねーよ。」
…やっぱり、探偵の言うことには説得感があるね。
「バーロ、そんなんじゃねーよ。」
違うの?
「オレが、オメーに、いち個人として話してんだ。肩書きは不要だろ?」
…うん、そうだね。
「わかればよろしい」
…ねえ、
「ん?なんだ?」
ありがとね。…もう少し、頑張れる気がしてきたよ。
「ああ…」

「オレもだ。」

 


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きっとそれはひどく曖昧で水に映る月のように不確かで春の終わりの花のように儚くてそれでも誰もが皆形にして教えてほしいものなのだろう