「ほら、帰るぞ」 傘を開いた新一の元へ駆け寄り、慌てたように言いながら手を伸ばす。 「あ、私が傘持つよ!」 「へ?」 …気付いたときには、既に柄を握っていた新一の手と自分の手が重なっていた。 「「……っ!?」」 とっさに、二人で同時に手を離してしまう。すると当然、傘は重力に従って落下するわけで――― ザァァァァァアッ。 …二人して、一瞬の後にはぬれネズミになっていた。 「げっ…」 「…なにやってんだろうねぇ、私たち」 苦笑しながら、傘を拾い上げる。全く、何のために開いたんだかわかりゃしない。 「新一、今からでも傘さそうよ。何もないよりはマシだろうし」 そう言って、差しなおした傘を手にちょいちょいと手招きをする。そちらへ歩み寄りながら、新一も苦笑した。 「全く…。本当に、何をやって」 …そしてそこで、絶句した。 「? どうかしたの、新一」 無防備にこちらを向いた姿に、とっさに俯いてしまう。…夏服の今、雨に濡れたらブラウスが張り付いて――― 「…とりあえずな、オレんち行こう。頼むから」 「は?ちょっ、何言って…」 腕をぐいぐい引いて歩きだした新一に、戸惑いの色が隠せずに抗議する。だが既に、新一の耳にその言葉は聞こえていなかった。 (誰か他のやつに見られる前に…!!) …それしか、考えていなかったのだから。 ------------------------------------------------------------ |