相合傘 −その2−





「ほら、帰るぞ」
傘を開いた新一の元へ駆け寄り、慌てたように言いながら手を伸ばす。
「あ、私が傘持つよ!」
「へ?」
…気付いたときには、既に柄を握っていた新一の手と自分の手が重なっていた。
「「……っ!?」」
とっさに、二人で同時に手を離してしまう。すると当然、傘は重力に従って落下するわけで―――

ザァァァァァアッ。

…二人して、一瞬の後にはぬれネズミになっていた。
「げっ…」
「…なにやってんだろうねぇ、私たち」
苦笑しながら、傘を拾い上げる。全く、何のために開いたんだかわかりゃしない。
「新一、今からでも傘さそうよ。何もないよりはマシだろうし」
そう言って、差しなおした傘を手にちょいちょいと手招きをする。そちらへ歩み寄りながら、新一も苦笑した。
「全く…。本当に、何をやって」
…そしてそこで、絶句した。
「? どうかしたの、新一」
無防備にこちらを向いた姿に、とっさに俯いてしまう。…夏服の今、雨に濡れたらブラウスが張り付いて―――
「…とりあえずな、オレんち行こう。頼むから」
「は?ちょっ、何言って…」
腕をぐいぐい引いて歩きだした新一に、戸惑いの色が隠せずに抗議する。だが既に、新一の耳にその言葉は聞こえていなかった。
(誰か他のやつに見られる前に…!!)
…それしか、考えていなかったのだから。

 


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