あなたのその手で、





「綺麗な髪。どうすればこんな真っ直ぐに伸びるの?」
暗闇の中で尚、浮かんで見える金の糸。今日は機嫌がいいようだから、触っても文句は言われないだろう。
「…オレがそんなことに気を使っていると思うのか」
「思わないから、不思議なの。ほっといてもこんなに綺麗なのが」
ゆっくりと梳いていた手が、ふと止まる。何かに引っかかって…すぐにそれが、血が固まったものだと気付いた。
「…らしくない。返り血?」
ぽつりと呟いた言葉は、どうやらお気に召さなかったらしい。ぎし、と軋んだ音を立てると、ゆっくりと覆い被さってきた。顔にかかる髪が、くすぐったい。
「…死にてぇのか」
自分が見下ろされている、ただそれだけなのに。銃口をあてがわれているような、死が迫っているような。そんな感覚に捕らわれる。
「…うん、死にたい」
それは恐怖ではなく、むしろ歓迎したいもの。
「いいよ、殺して」
「………ちっ」
再びどさりと横になると、今度は向こうを向いてしまった。会話拒否、ということらしい。
(……ねぇ、ジン)
私の幸せは、あなたに殺されることなの。そうして早く、あなただけのものになってしまいたいのよ。



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