「……あ!」
「? どうしたの、
「えと…」
不意に降り出した雨に、は狼狽えた。…今日は、全員分の洗濯物を干してきている。おまけにリズ先生と九郎は鍛錬、将臣は友達と遊ぶと言っていたし、朔と弁慶、ヒノエ、敦盛は買い物に行っている。譲は部活で、まだ帰宅していないはずで。
(洗濯物……)
まるでテレビに出てくるなんとかさんちの大家族のようなあれを。
「ごめん、先帰る!」
「え、ちょ、!?」
…洗濯物のために友達をおいて帰るなんて、我ながら所帯くさいなあなんて思いつつ。





雨、のち、





「景時さんっ!!」
「…ちゃん!?今日は確か、放課後友達と…」
「いいんです!手伝います!」
思った通りだ。
一人家にいた景時は、膨大な洗濯物をなんとか取り込もうと必死になっていた。
「ま…まさか、洗濯物のために帰ってきたのかい?」
「…しょーがないじゃないですか。景時さんだけだと、竿ごと落として全部洗い直す羽目になりそうだし」
「ははっ、ひどいなぁ」
景時は、ぱっぱっと手際よく洗濯物をかごへ放り込んでいった。いっぱいになったのを見て、一旦室内に運び込もうと持ち上げる。
「あ、ちゃん、重いから気をつけっ…」
「きゃっ…!?」
持ち上げたそれは、想像以上の重さでに重心をかけてきた。ふらりと足下が揺れ、衝撃を覚悟する。
(洗濯物だけは死守っ…!)
そうしてきつく目を瞑ったときだった。

とさっ

「………え?」
「だ…大丈夫!?ちゃん!!」
「かっ…景時さん?」
頭の上から聞こえる景時の声に、見上げてみれば目の前に景時の顔があって。…ここに至って、ようやく自分が抱きとめられていたことに気がついた。
「わっ、ご、ごめんなさ…!」
「俺は大丈夫だから。ごめんね、女の子にこんな重いもの持たせちゃって」
そう言って、が持っていた洗濯かごを片手でひょいと持ち上げた。
「あ……」
「残りのシーツ、お願いしていいかな」
にこりと笑ってそういわれ、かくかくと首を振って頷く。…頬が、熱い。
(そうだよね…景時さん、男の人だもん。私なんかよりよっぽど力あるんだよね…)
先ほど景時に支えられた肩が、熱い。…雨に濡れて、冷たいはずなのに。
「…っあ、シーツ!」
慌ててシーツを取り込みに走る。これが濡れたら、今夜敷くものがなくなってしまう。
ちゃん、大丈夫?」
「はい!」
かごを置いた景時が戻ってきて心配そうに言った。
「このくらい平気です!」
「でも…」
そう言って伸ばした手が、不意にと重なった。
「「っ!!」」
ばっ、と同時に手を離す。
「あっ…」
「シーツっ!!」
…時、既に遅し。洗い立てだったシーツは、無惨にも雨に濡れた庭へと落下した。
「……あーあ」
「…ま、仕方ない。急いで洗い直して、屋内に干しておこう。ちゃん、ほら」
「……え?」
濡れたシーツを抱き上げ、きょとんとして振り返る。
「もっと濡れる前に。中入ろう」
そうして、手が差し伸べられていて。
「………はい!」
一瞬躊躇って、頬を朱に染めながら。は、景時の手を取った。





「…それで、シーツが一枚足りないと?」
「いや〜、まさかあんなところで転ぶとは思ってなくてね〜。あはは、悪かったね」
「…景時。それで通じると思っているんですか?」
「えっ………」
「今夜は床で寝てくださいね」
「や、やだなあ弁慶笑顔が怖いよ…って敷き布団もなし!?ちょ、べんけーいっ!!」



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