「…MK5、という言葉が昔あったんだ。知ってるか?」
「知ってますよ…じゃあ、今のこの状況は」
「…さしずめ、HMK5ってとこか?」
「…何の略ですか?」
「ホークアイ中尉がマジでキレる5秒前。」
「彼女はキレる5秒前」
「…大佐は?」
びくっ。
ひそひそと会話をしていた面々は、肩を震わせて固まった。
「…大佐は?」
淡々と繰り返され、そのプレッシャーに耐えかねてハボックががたんと立ち上がった。
「あ、いや、その、えーと…」
だらだらと嫌な汗をかきながら、しどろもどろに答える。
「あの、ですね…その、コ、コーヒーを買いに出かけられて…」
「…で?」
「…そのまま、も、戻ってこられ…ま、せん」
「…そう」
ホークアイの瞳が、すぅっと鋭利な刃物のように細められた。
(こ わ い … !)
喉元に刃をつきつけられているような錯覚に陥り、ハボックはいっそ失神してしまいたくなった。
フュリーは遠慮なく泣いてるし、ブレダとファルマンは下を向いたままぴくりとも動かない。
「わかったわ。あとは私が探すから、あなたたちはこのまま通常勤務を続けて」
「は…はひっ…」
ばたん。
「――っはぁっ!はぁ、はぁ…あれ、俺いつから息止めてた…?」
「…お疲れ」
ハボックの肩にぽん、とおかれたブレダの手は、ぷるぷると震えていた。
どんどんどんどんっ!!
「うおっ!?」
突然響いた銃声に飛び起きたロイが見たのは、…自分が寄りかかって眠っていた木の幹に
うがたれた四発の銃弾。
「…へ…?」
「大佐。」
目の前には、銃口をつきつけたホークアイの姿。
…全身からざぁっと血の気が引くのが分かった。
「今すぐ執務室へお戻り下さい。さもなければ何をするか分かりません」
「は…はいっ…」
立派に脅しじゃないか…!
内心悲鳴をあげつつ、ロイは素直にしたがった。
…そう、彼女はキレる5秒前。
2004.5.25
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