日 和 

        青空日和 kaito ver








昔よく見た ピーターパン。
自由に空を飛びまわって、ウェンディがピンチの時には必ず駆けつける。
泣いてる子供を笑顔に変える魔法を使う、そんな・・・人。
すごく、羨ましかった ウェンディになりたかった。
駆けつけてくれる、ヒーローが居てくれたらな、なんて思った。





「んー。」
は大きく手を広げ、窓から空へ突き出した。
手の影が顔に出来て指の隙間からこぼれた太陽の光にそっ、と瞳を閉じた。
「っし!今日は、屋上。」
ガタンッ、とは席を立つと鞄とペットボトルを持って教室を後にした。
そのすれ違う中で会った快斗が、よっ、と手を上げた。
仲はいいけど、いいだけで、その先に進みたいような、少し怖いような。
不安定、というのが合ってるような関係 でも、彼と居るのは楽しいと思う。
その彼の笑顔は、時々ピーターパンを彷彿させる。



「相変わらず、見晴らし最高!」
この屋上は、見晴らしが最高。
うん、と頷いて座る場所を決めて本を開く、こんな時間が大好きだ。
がココに着くと、その後に彼はやってくる。
その証拠に足音とドアノブをまわす音が聞こえる。


「こんな青空独り占めなんてずるいだろ、?」
にっ、と笑う笑顔は、年よりも幼い印象を与える。
警戒心を、ヒトに与えさせない、そんな風にも思う。
「快斗は、いいの?講義。」
「ああ、ま、何とかなるだろ?」
抜かりなく代返も頼んだらしい彼は、楽しそうに笑った。
自分と同じだ、と彼の言葉に笑って頷いて、開いたままの本に視線を落とす。
隣の彼は、欠伸をして瞳を閉じた。
ふんわりと感じる金木犀の香り 空にある羊雲。
その蒼さに真っ白な雲が一層際立つ。



「"その時、彼はこう言った「いつでも行くから。」と。"」
目で追いかけていた文章と、聞こえてきた声が重なった。
ふ、と本に落ちてきた影が彼のものだなんて、顔を上げなくても分かる。
だって、ここには二人しかいないのだから。

〜、構って、くれる?」
まるで子供のようなことをサラリと口にしても全く嫌味にもならない。
彼の、魅力だと思う。周りが彼を「可愛い」と形容するのが分かる。


学生服から私服へ変わったくらいの変化しかない。
大学といっても、いきなり成長するわけでもないし。
それでも、少しずつ成長していけたらいいなあ、なんてのんびり構えてるこの頃。
隣の彼もそうなのか そうであって 欲しいと思う。
彼の言葉が読書終了の合図となって、本を鞄に戻して空を見上げた。
の動きにつられるように、快斗も空を見上げて眩しそうに瞳を細めた。


「こうしてるとね、空を飛びたくなる時がある。」
「・・・おめーらしいな。」
「気持ちがよさそうだからさ。」
「そうだな、気持ちいいだろうな。」


快斗に同意をもらえて満足したのか、さて、とは立ち上がった。
講義か?と快斗が聞いてくるので当たり前だ、と頷いた。
「快斗は?」
「んー、眠ぃ〜・・・。」
「・・・風邪引くよ。」
今期初、おろしたてのマフラーを彼の首に巻いて、じゃあね、とドアを開ける。
「さんきゅ。」との背中を見送って、マフラーの暖かさに頬の筋肉が緩む。
快斗ってば、だらしないよなんて声が聞こえてきそうな顔をしてるのは、快斗自身自覚済み。
が巻いてくれた薄い水色のマフラーは、今日の空のよう。
そういえば、屋上に続く階段、自分が上がってくる時・・・・。
(・・ッ! ワックスッ!)
閉まりかけたドア、駆け出してマフラーが風に揺れた。
咄嗟に動いた体 ドアに駆け寄ったのと、彼女の足が床に着いたのは同時で、
案の定、彼女はワックス塗りたてのピカピカの床に足を取られていた。


「っわ・・・。」
「っ、っ!」

グイ、と引き寄せられた。
ドキドキした音が彼に聞こえちゃうかもしれない程大きくて、自分の心臓に手を当てた。
(あれ・・?私・・・じゃ、ない。)
顔を上げると、快斗の前髪が目に飛び込んできた。
屋上のドアを開けたままで、太陽の光差し込んで彼の顔は影になっている。
どんな顔をしているかなんて、分からないけれど。

「・・・ったく、階段から飛ぶつもりかよ。」
「・・・。」
「おい、、大丈夫か?どっか打ったか?」
「・・・う、ううん。どこも・・・。」

「マジ、びびった。」
「ごめん。」
「いや、・・・怪我 無くてよかった。」


聞こえてきた音、ドクン ドクン という音。
もしかして、快斗・・の音なのだろうか。
そんなこと、思っていいのだろうか。


のおかげで、眠気がふっとんだ、と快斗は笑って一緒に階段を下りた。
普段と同じ顔で笑ってるのに、彼の力強い腕が、声が。
隣の席に座った彼が気になって仕方なかった。
ピンチの時に駆けつけてくれる、ピーターパン。
まるで、さっきの彼は・・・快斗は・・・・。
眠そうな顔、笑ってる顔しか見たことなかったのに。
ゆっくり大人になりたいなと思ってたのに、快斗と一緒にそうなりたいと思ったのに。
(ずるいよ・・・。快斗のばか。)

大きな手が、触れたとことが 熱いよ・・・ 快斗。
駆けつけて くれた の・・・?

気持ちよさそうに眠る彼は、まだ何も言わないまま。
目を、開いたら 聞いてみようかな。

ねえ、快斗・・・








===アトガキ==============================
20051022

ウタノさんvリクエストありがとうございました。
ご希望に添えていると良いのですが・・・(ドキドキ・・・)
幼さと大人っぽさをあわせ持つのは彼の魅力だなぁとしみじみ思います。


ウタノさんへ
(THANKS 20,000HIT request)




---------------------------------------------------------------
素敵なお話をありがとうございました〜っvv
もうもう、「このお話が読みたかったの!!」と拳を握り締めてしまうほど
理想どおりのお話で、楽しませていただきました。代返とか妙にリアルな所
も素敵です(笑)
ムツミさん、本当にありがとうございました!!



BACK