よく会話が続くね、と言われることがある。
まあ確かにそう言われてみれば、何て思わなくもないけどあれで結構会話が成立する。
ただ、一般的な会話とは異なるような気はするけれど言葉のキャッチボールは出来てると思う。

「秀一、聞いて!」
「なんだ」
「この前話したあのお店、行こうとしたら予約でいっぱいだった」

折角行こうって言ってたのにね、と言うと彼はチラっと視線を動かしてまた伏せるように瞳と閉じた。こういう会話をしていると誤解されそうだから予め断っておくと、あたしと秀一の間に甘い空気は一切ない。飲み友達という表現が一番しっくりくるというか、それ以外みつからない。もっとも飲みに付き合えと言うのはあたしからが主で、彼は予定が合う場合、割と付き合ってくれていると思う。
(この無口さが、きっと難点なんだろうな・・・)

「秀一は、合コンなんて興味ないよね?」
「そうだな」
「やっぱりね、人数足りないけど急遽よろしく!何て言われたことないでしょ?」
「・・・ない」
「だよね、うんうん」

秀一が合コンでグラス傾けてるなんか想像できないもんな、と言うと彼は少しだけ動いて想像なんかしなくてもいい、と言う。だよね、と笑うと彼はまた視線を落とす。折角外行く予定だったのにどうしようかなと立ち上がって、とりあえずはキッチンの確認。材料はないわけでもないけれど、外で食べると決まっていた日にあまり料理をする気にはならない。

「ねー、秀一は居酒屋とか行ったりしないの?」
「いや」
「よし!じゃあ、秀一が行くお店に行こう!」

そうと決まれば準備しなくちゃ、と部屋に駆け込んでレストラン用にしていた服をクローゼットに押し戻して煙もくもく、オヤジのいい声が飛び交う空間に合いそうな気楽な服を引っ張り出した。何であたしの家に秀一がいるのかと言えばあたしの準備が遅そうだからという変な理由。遅刻なんてしないし、準備だって前もってしてるのにと言っても彼はチャイムを鳴らす。

、行くぞ」
「わー、待った、待った!秀一早い!」

だから迎えに来るんだなんて言われそうだなと思いながら鞄に必要なものを詰め込んでドアを開けると玄関付近に壁に体を預けるように秀一が立っていた。腕を組んで、体を壁に預けるようにして立っているのは彼の癖なんだろうか。
駅から近い場所がいいな、とか煙もくもくのお店だといいなとか、店長は大将って感じがいいなとか勝手な想像を膨らませながら秀一と目的地まで徒歩で移動。

「歩くの遅い?」
「いや、別に」
「でも、秀一普段早いのに」
「気にするな、オレはこの程度がいい」
「ありがとう、ジェントルマン!」
、信号は守れ」

はいはい、と肩を竦めて点滅して少し時間の過ぎた信号の前で立ち止まる。そもそも今日の飲み会の目的は最近落ちてるから励ましてと言うあたしの一言から始まったものでよく、忙しい身でありながら付き合ってくれてたなと思う。





Love Situation





お店の前について、自分の想像通りの外観にやったー、と叫んでイソイソと中に踏み込んで角のカウンターに腰を下ろして、とりあえず生二つと注文をすると彼が小さく笑って、変わらないなと呟いた。そう簡単に変わったりしないよ、と言うとそうだなと小さく頷いた。
つい最近、友人の結婚式に立て続けに招待されおめでとうと何度も口にして何度も披露宴の最後の両親への手紙でもらい泣きをして、式場を後にするときは目が真っ赤だった。それを話すと会社の同僚は、深い意味はないのだろうけれど「次はあんただね」何て気軽に言ってくる。そのたびに笑ってだといいなと言うのにも疲れて、今に至るわけで一気に冷えたビールを流し込むと、そういえば梅が満開だったな、何て珍しく彼が口を開いた。

「梅?どこにあるやつ?」
の家の近くにあるだろ」
「あ、ああ、あの小さな公園か」

てっきり桜だと思ってたよ、と言えばこの時期はまだ早いなと彼が笑う。花見したいけど、今年はできるかなと言うと夜でよければと秀一が顔を上げた。それで、何で気落ちしてるんだと彼がグラスを傾けて視線を飛ばしてくる。いや他愛もないことですが何て笑いながら、口を開いても彼は静かなまま、次の言葉が出てくるのを待ってるように感じた。
(こういう優しさを、もっと周りが知ってればなぁ・・・)

「いやー、桜どころか氷河期っていうか」
「氷河期、か」
「そう、氷河期、超氷河期って言っても過言ではない」
「そうか」
「あーあ、それにしても何でこう・・・あたしは上手くいかないのでしょう」

そんなことをオレに聞かれてもと言うかと思った。実際言われたら、そうだよねと答えようかななんて思ってたりしたのに彼はグラスを傾けながら視線をあたしに向けると、「」と口を開いた。

「オレにするか」
「・・・頷いたらどうするのよ」
「願ったりだな」

そんな感じで、きっと周りから見たら何を話しているのかと思うような人たちでも割と普通に会話は成立してて、お互いそれに不満や気まずさを感じたりしていないものだ。秀一乾杯しようよ、とグラスを持ち上げると何回目と思ってるんだと言いたそうな顔をした後綺麗な装飾をしたグラスを傾けてぶつけ合うと、ゴンと鈍い音を奏でた。

「あ、おじさん生一つ!」

へへ、と笑って空グラスで乾杯したことを誤魔化しながら(誤魔化せてないと思うけど)少しだけ秀一との距離を縮めた。
今までよりも靴一足分だけ、近い距離。きっと、日常にこんな愛しい時間が散らばってる。



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秀一いいいいい!!!!(思い切って呼び捨ててみました←猛烈な勇気)
ムツ姉から4周年記念で赤井さん夢をもらっちゃいましたああ!!なんかこう、脳内自分目線で壁に寄っかかってる赤井さんやグラス持ってる赤井さんが動画で流れていきました。ぜひ池田秀一さん(声優さん)に「俺にするか」と言われたいです(萌え死に上等)
本当に、本当にありがとうございましたあああああ!!!!


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