「ははははは!!今の私は無敵だ!書類!?そんなもの一瞬で片づけてくれる!どんどん持ってこい!」 しゅばばばっ、と効果音のつきそうな早さで腕を動かしているロイに、フュリーがおそるおそる声をかける。 「た、大佐…これにサインを…」 「サイン?どこだ!」 ぐりんっ、と妙に勢いをつけて首を回し、やはりすごい早さで受け取る。 「これでどうだ!」 ぺし。 「…大佐、お願いですからもう少し落ち着いて下さい」 手に持っていたファイルでロイの後頭部をはたき、ホークアイがため息をつきながら言った。 「…いやいや、それは無理だよ中尉。こうして椅子に座っているだけでも御の字だと思ってくれないと」 「あのですね…」 既にツッコミを入れるのを諦め、それぞれの職務を全うしている他の面々に心の中で謝罪する。まさかここまではしゃぐとは思っていなかった。 「…大佐、中尉にOKもらったんスか」 そんな中、机に脚をかけ、椅子をゆらゆらさせながらくわえ煙草でハボックが言った。 「ん?あぁ、仕事が終わってから、という制約つきだがな。羨ましいか?」 「ええ」 からかい半分・自慢半分で聞いたロイに対し、真顔で答えたハボックにロイがきょとんとして返す。 「…本気で?」 「冗談に決まってるでしょうが。さっさと終わらせないと愛想尽かされますよ」 ぎっ、と音を立てて椅子を戻し、中途半端なまま放り出していた書類に取り組み出す。 「お前に言われるまでもないぞー!ははははは!」 「大佐、サインはみだしてますから…」 (…良かったじゃないスか) ほんのりと、わだかまっていた何かがやんわりと溶け消えてゆくのを感じて。…ひとつ大きくため息をつくと、ハボックは目の前の書類に全神経を集中させた。 「賑やかな通りよりは、落ち着ける場所がいいかと思ったんだが…」 言って、ロイは所在なさげに視線を泳がせた。…目のやり場が、ない。 「…まぁ、イブですから」 あっさりそう返すが、ホークアイとて決して心中穏やかではなかった。今いるのは、街を一望できる小高い丘の上である。普段なら人がいることすら滅多にないような場所なのだが、今やカップルの坩堝となっていた。 (…寒い、わね) もう少し、厚着をしてくるべきだった。雪こそ降ってはいないものの、当然吐く息は真っ白だし、鼻と頬は朱に染まっている。己を抱きしめるような体勢で寒さに耐えていると、ふいにあたたかな空気に包まれるのを感じる。 「…寒いだろう?」 「大佐…」 ロイが、自身のコートでホークアイをすっぽりとくるむように包み込んだのだ。無論、ロイは着たままなので自然密着状態になる。 「た、大佐…その…」 「まぁ、いいじゃないか。今夜くらい」 ホークアイが何か反論する前に、優しく制す。慣れない体勢に逃げ出したい気持ちもあったが、あたたかさが心地よいのも事実だったのでここはロイの言葉に甘えることにした。 「…綺麗だな、中尉」 「ええ…本当に」 クリスマスの装飾で、街中が輝いている。冬の冴えた空に輝く星と街の星とが、眩しいほどだった。軽くホークアイの肩を抱き寄せて、囁くように言う。 「今日、君と過ごせて良かったよ」 周囲のカップルにすっかりとけ込み、雰囲気も手伝ったのだろうか。軽く微笑むと、ホークアイも小さく返した。 「…ええ、私もです」 「…っ!?」 その台詞に、カッ、と頭に血が上る。爆発しそうな喜びを押さえるため、小さく息を吐く。 「…大佐」 「え?」 風のように。触れたか触れないか、本当に刹那の出来事だったが、確かに頬にやわらかな感触を感じた。 「いつも、ご苦労様です」 …結局、ロイは爆発を押さえることができなかった。 ---------------------------------------------------------------- このあとがばっ!と抱きついて突き飛ばされます(報われないロイ)ある方のお言葉に触発され、微妙にロイアイ←ハボ風味です。ハボには悪いけど、ハマりそうですよ自分(わぁ) …あはは!やっちゃった!ほっぺちゅーしちゃったよ!!ギャー!恥ずかしい!(どこまでも恋人未満な人間なので)たまにはロイにもいい思いさせてあげなくちゃね!などという心持ちで挑んでみました。ま、これが私の限界です(苦笑)えーと、微妙に100題の「神様」の続きだったりするのですよ。 |