永遠のキス





「おーっす久しぶり!生きてるかー?」
ばたーんっ、と無遠慮に開け放たれたドアからは、久しく聞いていなかった親友の声が飛び込んできた。
「…ったりまえだろ!この家は僕が守ってるんだからな!」
「おーおー、言ってくれるな」
迎えに出てきたジェームズの肩越しにキッチンを覗き、慌ただしく駆け回っている背中に声をかける。
「リリー!こいつはいい旦那やってるか?」
「忙しいのよ!暇なら手伝ってちょうだい!ジェームズもね!」
矢のように飛んできた大声に、シリウスは小さく肩をすくめた。
「かかあ殿下か?」
「人聞き悪いこと言うなよ」
お互いに顔を見合わせ苦笑すると、戦場と化しているキッチンへと向かった。
「テーブルセッティングを手伝って欲しいの」
大皿を並べようと、普段使わない高い棚へ手を伸ばそうとしたリリーをジェームズが慌てて止めた。
「いいよ、僕が取るから」
「そう?…ジェームズは心配し過ぎなのよね」
結局、自室まで戻って杖を持ってくると、ジェームズは鼻歌を歌いながら皿を並べ始めた。
「………。」
その一連の些細な出来事を、シリウスは見逃さなかった。軽く口角をつり上げ、笑みの形をかたどって言う。
「……オメデタ?」

ガッシャン!!  ゴォォォッ!!

「うわわわわっ!?」
「きゃぁぁぁぁ!?」
棚からテーブルを目指していた皿はことごとく空中落下し、鍋の火加減を見ていたリリーは大幅に調節を誤った。
「ビンゴ!」
シリウスはピィーッ、と軽く口笛を吹くと、皿を修復するためにしゃがみこんだジェームズの肩にぽん、と手を置いた。
「まぁあれだ、心配してたが、ちゃんとやることはやってたみたいで安心したぞ」
「…もう少しまともな祝い文句が言えないのか、お前は」
「俺なりの精一杯の祝辞だ」
「…有り難く頂戴しておくよ」
言って苦笑する。確かに、シリウスに笑顔で「おめでとう」と言われるのもどうにも気色悪い。修復を手伝おうとしたシリウスを押し止め、リリーのほうを見てきてくれと声をかける。
「オッケー。おいリリー、無事か?」
「無事じゃないわよ!!」
軽く焦げた前髪に、吹き出しそうになるのを必死にこらえる。今吹いたら、せっかくできている他の料理が炭にでもなりかねない。
「何ヶ月だ?」
「……三ヶ月」
炭化した鍋を直しながら聞いたシリウスに、軽く頬を染めながら答える。まだ、ジェームズ以外の他の誰かには言ったことがなかったのだろう。
「へー。てことは夏休み生まれか?楽しみだな」
杖をリリーに向けて軽く呪文を唱えると、焦げた前髪は一瞬で元に戻った。
「…ええ。すごく楽しみ」
やんわりと、本当に幸せそうに微笑んだ顔は…既に、母親のそれを思わせた。
「おーい、誰もいないのかーい?」
「リーマス!」
ばたばたと玄関へ走っていったジェームズに代わり、シリウスが残りの割れた皿を直していると、リーマスとピーターがひょっこり顔を覗かせた。
「お、やっと来たか」
「全員揃ったな!よーし、クリスマスパーティーだ!!」
ジェームズの声に合わせ、頭上では高らかにクラッカーが鳴った。







「じゃーな、ジェームズ」
「またねー!」
「リリーもお大事に」
時間はあっと言う間に過ぎ去り、既に零時を回っていた。ひらひらと手を振る三人に、ジェームズも笑顔で応える。
「ああ。またいつでも来てくれよ」
三人の背中が見えなくなるまで見送ってから、家の中へと戻った。キッチンで洗い物をしているリリーの側まで行くと、その髪に軽くキスをする。
「…なぁに?」
笑いながら聞くリリーに、ジェームズも笑みを含んだ声で言う。
「したかったからしただけさ。今日はお疲れさま」
「どういたしまして。私も楽しかったわ」
皿を洗うのはスポンジに任せ、リリーはソファへゆっくりと身を沈めた。
「きついのかい?」
「ううん。そういうわけじゃないんだけど…」
同じく横に腰掛けたジェームズの肩に、ぽすっともたれかかる。…言いようのない幸せと安堵感に包まれるのを感じて、ゆっくりと目を瞑った。
「…リリー?」
「ねぇ、ジェームズ」
「ん?」
ふんわりと、やわらかな赤い髪を梳きながら問い返す。
「…たくさん、たくさん、愛を注ぎたい。世界で一番幸せになって欲しい」
「…うん。僕もだよ」
そう言って、ジェームズはリリーの唇にそっとキスをした。
「きっとそうなる」


…永遠の愛を約束するような、優しいキスだった。




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すみません、これ書いてて初めて気付いたんですが、私相当ジェムリリが好きみたいです。犬鹿とかもそれはそれでいいんだけど、ジェムリリやばい…大好きだ…!他のサイトさんで読んだことないので、こんなんでいいのかどうか怪しいもんですが;
…って、今うちのサイトを覗いてくださっている方がジェムリリを読んで下さるかどうかすら果てしなく謎なんですが(笑)


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