雪の音。





「積もったなー…」
宿を出て、エドがぽつりと呟いた。続いて出てきたアルも、感心したような声を上げる。
「すごいや。交通機関、マヒしてないかなあ」
「こんくらいなら平気だろ。…行くか」
まだ微かに降り続く雪の中、エドはそのまま歩きだした。周りを見渡していたアルも、慌てて続く。
(…冷たく、ないな)
両足で雪を踏んでいても、冷たさを感じるのは片足だけ。試しに差し出した右手の上では、雪は溶け消えてはくれない。
真っ白な雪の上につく足跡は、人のものと異形のもの。
ぎしっ、ぎしっ。
きしっ、きしっ。
雪を踏む音も、異なった響きで聞こえる。
「…アル」
「うん?」
今はまだ、でもいつか。
「…雪の上を、裸足で走ろうな」
霜焼けになろうが、知ったこっちゃない。冷たさを感じて、同じ音を響かせて。
「…うん、そうだね!」
二人並んで、足跡をつけよう。白い景色に、飛び込もう。
…いつか聞こえる、雪の音。

 


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