君 の こ と 。





誕生日が、あまり好きではなかった。
「きょうだい」というものは、どちらかだけに何かをあげるというわけにはいかないらしい。譲の誕生日でも当然のように将臣も何かをもらうわけだが、やはり年齢の都合上、誕生日の自分よりも立派なものをもらっているのを見て、幼いながら何とも言えない気持ちにはなっていたのだ。兄に対するコンプレックスなんて、持つきっかけは割とどこにでも転がっているのである。
けれどそれがあまり誉められた感情でないこともまた同時にわかっていたので、自分がそんな感情を持つことも嫌で、譲は1人で近所の原っぱへと出かけた。
(…誕生日なんて、そんないいもんでもないなあ)
大昔みたいに、一年したらみんなで一緒に年をとればいいのに。そんなことを思いながら、ドサッと腕枕で寝転がる。
(……空…青いな…)
夏本番が、近い。
夏休みになったら、またドリルの宿題が出るのだろうか。
面倒だな、とは思ったが、嫌だとは思わなかった。
夏休みには、楽しみもたくさんあるから。そう、例えば……
「譲くん?」
「うわぁぁぁあっ!!!」
ひょい、と顔をのぞき込まれ、呼ばれた名前に飛び上がるようにして起き上がる。
ちゃっ…!び、びっくりした!」
「えー」
譲の言葉に何故か不満を唱え、が譲の横に座り込んだ。
「おばあちゃんに聞いたら、きっとここにいるよって言うから来たんだけど、遠くからだと自信なくって。譲くんの髪の色、きれいなみどりだから紛れちゃうんだよ」
言って、くしゃくしゃと頭を撫でる。…また年下扱いして、と思うが、嫌な気持ちはしなかった。
(きれいなみどり色…)
その言葉が、くすぐったい。
の目の届かないところに行っちゃ、ダメだからね?」
「……………うん。ちゃんも、遠くにいかないでね。」
何の気なしに言った言葉、だけど。
無意識につめこんだ想いに、も無意識に応えていて。
「うん!ずっと一緒にいようね。」
にこりと笑って、譲の肩に頭を預けた。
「ど、どうしたの?」
「譲くん探して疲れちゃった。だからちょっと、休憩。」
…今日譲を探していたのも、別に誕生日がどうとかじゃなくて、単に遊び相手を探しただけなのだろう。…それでも。
「……ありがとう、ちゃん。」
肩に感じるあたたかさが、心地いい。
…このぬくもりを、どうかこれから先も、一番近くで感じられるように。守っていけますように。
そう、小さな決意を胸に秘めて。

………やがて二つになった寝息が、風と一緒に優しいメロディーを奏でていた。



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