「…うーん」
「あれ?、また居残り?」
「らぁ〜ん!!」
ひょい、とノートを覗き込んだ蘭に、は涙目で訴えた。
「今日はね、珍しく遅刻もしなかったし、居眠りもしなかったんだよ?」
「う、うん…」
それが当たり前なのだが、にとっては珍しいことらしい。
「なのに、あの推理バカが…」
「新一?」
「そう、新一。『いっつも居残りしてたからなにもないのは寂しいだろ?オレが特別課題出してやるよ』とか言って、この山のようなプリントを…」
そこまで言って、ははたと蘭を見つめた。そして、ぱあぁっと目を輝かせる。
「…な、なに?」
がこういう顔をするときは、ろくなことがない。蘭は身を引きながら、おそるおそる聞いた。
「蘭って私より頭いいよね…!!」
「え…」
「手伝って欲しいの!こっちの山を」
そう言って、明らかに自分より多いプリントの山を指差す。


「適当にちゃちゃっとさ」


ぺしっ。
「…それじゃオメーのためにならないだろうが」
後頭部に下敷の鉄槌を下し、新一が呆れたように言う。
「し、新一さん…お早いお帰りで…化学の質問は終わったのですか?」
「先生が帰ってた」
ゆっくりと振り返り聞いたに、新一はあっさりと答えた。
「蘭、園子が探してたぜ?」
「え?わ、早く行かなきゃ!」
がんばってね、とにひと声かけると、蘭は慌ただしく教室を出ていった。
「あー…蘭…」
未練がましくドアの方を見ているの頭をつかみ、くるっと机の方へ向かせる。
「自分でやってこそ力がつくんだからよ。ほら、教えてやるからノート開け」
「…はーい」
勉強なんて大嫌い。
だけど…
「じゃあ、こっからやるぞ。いいか?」
「うん」
…あなたが教えてくれるときだけ。ちょっとだけ、好きになれる気がするの。
「今やったばっかりだろ!?ほら、ノート戻って戻って!」
「うわーん!」
…もーちょっと優しかったら、パーフェクトなんだけどなぁ…。



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