「せーんーせ、こんにちは!」
「…また君かい?」
ひょっこりと顔を覗かせたに、帝丹高校の保健医…新出智明は、苦笑した。
「今度はどこが悪いのかな?お腹か、指か、それとも頭かな」
「…さりげなく毒舌だなあ」
「頭痛じゃないか、という意味ですよ。さんは二日に一度は頭痛になりますから」
本当かどうかは謎ですけどね。
そう言うと、新出は軽くウィンクした。
「〜〜〜うー。とりあえず、今日は違います。本当にお腹が痛いんです」
そう言うと、新出の耳元に口を寄せ、こっそりと早口で告げる。
「…生理がひどいんです。薬、頂けませんか?」
「…そういうことなら」
そう言って、新出が棚に立った隙にすすすっと後ろまで回り込むと、ぎゅっと抱きついた。
「ちょ…さん」
「ねー先生、返事しなくてもいいから!告白だけ聞いてよー」
もう何度目になるのかわからない台詞を聞いて、新出は苦笑して言った。
「…だめだ、と何回言ったら分かるんですか」
腰に回されたの腕をやんわりと解き、くるりと向き直る。目が合った瞬間、ふてくされたようにが言った。


「いいじゃん」

「絶対だめ」


頑な台詞に肩を落とす。今日もまただめか、と諦め、渡された薬を飲もうと、後ろにある水道へ向かったときだった。
「君の想いに」
唐突に耳元で聞こえた声に、は飛び上がりそうになった。そうならなかったのは、肩を押さえられていたからだ。
「…君の想いに応えるには、僕は立場上色々まずいんだ。だから」
がらっ。
「先生ー、突き指しちゃったんですけどー」
「今行くよ、椅子に座って待っててくれるかな」
体操服を来た生徒の方へ向かって行った新出を、は動けず気配だけで感じた。
やがて、へなへなと保健室の床に座り込み、真っ赤になった顔を手で覆う。
…最後の、あの言葉。


「卒業したら、君の告白を聞かせてくれるかな」


…先生。
それって、つまり…?




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