降りしきる雨。 応援の声もかき消されるような中でも、試合は中断することなく続いていた。 「ちょっと、新一くんすごいことになってるよ」 「うん…」 なんというか…雨と、というより、泥と同化している。他の選手よりその割合が酷く見えるのは、の気のせいではない。 「おい工藤!お前、今日はもう引っ込んだ方が…」 「バーロー、それじゃ思うツボだろ?」 チームメイトの声にも、新一は不敵な笑みを浮かべてそう答える。 「けどよ…」 既に新一のユニフォームは、元の色が分からないくらい泥まみれになっている。別に、新一が何度もスライディングを決めた、というわけではなく… 「っと、悪ぃな!」 「…っ!!」 敵チームから強烈な足払いを受け、新一はまたも泥まみれの地面へと倒れ伏した。 「新一っ…!」 もう何度目なのか分からないその光景に、はもう少しでとんでもない悪口雑言を吐くところだった。相手チームが、新一ばかりを執拗に潰してくるのだ。 「…おいっ、審判!テメーの目は節穴か!?明らかに反則だろーがよ!」 「やめとけよ」 語気を荒げる仲間を制し、新一が苦笑しながら立ち上がる。 「そんなことより、結果で見せてやろーぜ。…カッコ悪ぃとこ、見せたくないしな」 ちらり、と応援席を見やれば、心配そうにこちらを見ていると目が合った。 (心配するなって) 軽く手を振り、試合に戻ろうとしたときだった。 「新一ぃー!!」 雨の中を突き抜けて届いた声に、慌てて振り返る。 「負けたらっ、承知しないからねーっ!!頑張れ新一ぃー!!」 の大声に、周りは呆気に取られている。しばしぽかんとしたあとで、新一も大声で、笑顔で答えた。 「おぅ!」 「…妬かせるねー」 仲間にぽかぽかと叩かれながら、新一はまた球を追って走り出した。 「…やるねー、」 「まぁ、ね」 からかうような友人の声に、は軽く頬を染めつつ、胸を張って言ったのだった。 「おつかれ!おめでとう!」 試合終了後、はタオル片手に急いで新一のもとへ走っていった。 「私の応援、効いた?」 の言葉に、新一は満面の笑みで答えた。 「あぁ、すげえ効いた」 「…良かった!」 新一の髪をぐしゃぐしゃと拭きながら、も笑顔で言う。 …雨空の隙間から、微かに青空が見え始めた。 ---------------------------------------------------------------- BACK |