私が居候を始めてから、結構な時間がたった。 もう近所だって知らないところはないし、こっちのコンビニで買い物だってできる。 雨とジン太の喧嘩の制裁だってできる。(これ、結構自慢。) だというのに、肝心の家主は、どうにも私を信用してくれない。 「だーかーら、買い物くらいできますってば!」 「お金の出し方わかる?袋はいりませんって言えばスタンプは二倍ですよ?」 「わかってますってば!だからこうしてエコバッグも持ってるでしょ!」 がま口の財布を渡しながら、相変わらず心配そうに言う。 「一人で平気?」 「むしろ一人で行かせてください!浦原さんが一緒だと、そっちのほうが私成長できない!」 「そうは言いますけどね、アタシだって心配なんです、待ってる身にもなってください」 「確かにこの前豚肉と秋刀魚を間違えましたが!!」 「その間違え方がありえないんです」 むに、とほっぺをつままれて、言葉に詰まる。 「…やっぱり心配だ。一人でお使いはもう少し先ですね」 そう言うと、足元の下駄を引っ掛ける。 「ウールル、ジン太。しばらく店番お願いしていいかな」 「店長、出かけるのか?」 「すぐ戻るよ」 カラン、コロン。 結局今日も、下駄を転がす音が後ろから聞こえる。 「…いいって言ってるのに。」 「アタシが大丈夫だと思ったら、一人で行かせてあげますよ」 「…はいはい。」 過保護だなあ、と思いつつも。 優しい視線を感じて、背中はあたたかかった。 ---------------------------------------------------------------- BACK |