どうしてこんなに胸がざわつくんだろう。
ざわ、つく。
いや、少し違うかもしれない。
「…わくわく、とも違うんだけど。」
「へー」
完全にスルーされた。
「いやそこはもう少し突っ込んで欲しいかな」
「なんで」
「…なんでと言われましても。」
快斗の顔を恨めしげに見る。元気がないなら相談に乗るといったのは、そちらではなかったか。
「言ってることが違うじゃない」
「だーって。オレ、わかっちゃったんだもん、今の話聞いてるうちに」
つまらなさそーに言って、快斗はポテチを放り込んだ。
「え、なに?教えて、教えてよ!」
「ヤダ。ぜーったいヤダ」
完全にふてくされモードだ。意味がわからない。
「…おや。こんなところで何をしてるんですか」
キィ、と屋上の扉が開き、先ほど話題に上った彼が現れる。
「……白馬。おめーこそ、なんだよ」
不満そうに言われ、白馬が口角を吊り上げて言う。
「それを君に言う必要があるかい?」
(……おかしい。)
せっかく、落ち着いてきていたのに。
白馬が現れた途端、また先ほどのおかしな気持ちが復活してしまった。
(挙動不審に、なってないといいんだけど)
そんなことを考えながら、黙って俯く。
「……。」
それを見て、快斗がため息をついた。
「…白馬ァ。なんかさ、こいつが胸が苦しいんだと。おめー、心当たりあるか?」
(な!)
唐突な快斗の振りに、ばっと顔を上げる。
「………うん?」
その様子を見て、白馬がどこかそらっとぼけたように言った。

「見当もつかないな」

「…そうかよ」
(わかってんだろ?なんでそんなこと言うんだ)
「…………ああ。」
(そう素直に返したら、面白くないだろう?)
目でなにやらやりとりをしている二人には気付かず、妙な虚脱感に襲われへたりこんでいた。
「あんま気にすんな。多分その内解決するだろ」
「え?へ?」
ぽんぽん、と頭を叩かれて。
わけがわからずにいると、その手を白馬が払った。
「…んだよ」
「別に?」
見当もつかない、なんて。
よくもまあ、言えたもんだと快斗は半ば呆れながら思った。




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