「じゃーん!普段迷惑ばかりかけているセブルス君のために、我ら“ジェームズと愉快な仲間達”がこんな会を催しちゃうよ!」
「何言ってるんだ、“シリウスとその従者達”だろ!?」
「…リーマスとその下撲達…」
「仲良し四人組でいいじゃないかー」
やいのやいのと始めた四人を尻目に、スネイプはこれ以上寄せられないほどに眉間にしわを寄せていた。
「…一体なんのために我輩を呼び出したのか説明して欲しいのだが」
ぴたり。
その声に、とうとう取っ組み合いにまで進展していた四人は動きを止めた。
「悪い悪い、そうだったね。実は、いつも見事なまでに撲らの悪戯にことごとく引っ掛かってくれる君に、労いの気持ちを込めて“セブルスこれからもいっちょよろしく☆”パーティーを…」
「帰る。」
言うが早いか出口に向かったスネイプの前に、リーマスが立ち塞がる。
「まぁまぁ、遠慮しなくていいよ。実は昨日、君が悪戯に引っ掛かったのが100回に到達してね。そのお祝いってわけさ」
「退け。」
青筋を浮かべながら言うスネイプにも動じず、リーマスはスネイプをずるずると部屋の中央まで引き戻した。
(くそ…こいつらの呼び出しに素直に応じた我輩が愚かだった…)
喜色満面の四人を前に、スネイプは軽く舌打ちした。
「なんでも良いが、早めに終わらせて欲しいものだな。貴様らのような愚民とは違って時間を無駄にしたくないのでね」
それを聞いて、シリウスがジェームズに「どうする?」と問掛ける。
「うーん…今日は僕ら、本当に悪戯する気はないんだよ。でもそういうんなら仕方ないな。全員同時ってことでいい?」
『オッケー!』
「どっ…同時って、やはり貴様ら、何か」
スネイプの抗議の声は、シリウスの大声で掻き消された。
「俺からのプレゼントはうまい棒三年分!!」
(三年分!?そんなにいるか…!!)
どどどどどっ、と頭上からうまい棒が文字通り山のように降ってきた。しかも…
「何故包装されていない!?うわぁ油っこくて気持ち悪い…!」
だが、休む間もなくすぐにリーマスの声が続く。
「僕からはヌガー一年分!」
「うわあぁっ!!?」

ずどおっ!!

一年分なのに、明らかにうまい棒三年分より多い。…どうやら量は、個人の基準らしかった。
(うう…気持ち悪い…)
辺りに漂う甘い匂いにめまいがする。
「用意するのが大変だったから、これは僕とピーターの二人からだ…」
言ったジェームズの顔が、にやり、と笑みの形を作ったのをスネイプは見逃さなかった。
(来る……!)
「バタービール二週間分だー!!」
「え…?」
(なんだ、意外と普通じゃないか…?)
そう思ったときだった。

ドドドドドドド…

何か…例えるなら、ヌーの大移動みたいな地鳴りが響き渡る。
「ちょっ…おい、貴様、何を…」

どぶばぁあぁぁっ!!

「ぎゃああああああ!!?」
向かいの扉がズバァンッ、とものすごい音を立てて開き、そこからバタービールの洪水が押し寄せてきた。
「あはははははは!!」
ちゃっかり箒に乗って自分は避難しつつ、押し流されていくスネイプを見てジェームズは笑い転げた。
(一体一日何リットルバタービールを飲めばこんな量になるんだ…!!)
バタービールの波が引いたときには、スネイプは心身ともに疲労困憊状態だった。
「じゃあ、感想を聞かせてくれるかな?」
ジェームズの言葉に続き、三人が声を揃えて言う。
『プレゼントはどうだった?』
…この世で一番汚い悪口はなんだ、何を言えばやつらを黙らせることができる?あらゆる悪口雑言が頭をよぎったが、実際に言葉として出たのはたった一言だった。


「帰らせてくれ……。」


二度とあいつらの口車には乗るまい。
そう固く心に決めたスネイプだったが、しばらく後には「おめでとう☆二百回記念!」にやはり引きずり出されることになる。




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2004.7.18

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