「………。」
落ち着け。
落ち着くんだ。
お前は誰だ?大総統になる男だろう…!
こんなことで、こんな、こんな……

べきょっ。

「…さーんぼーんめー」
ロイが放り投げた折れたペンを回収しつつ、ハボックはやれやれと頭を振った。そして、ちらりと入り口付近を見やる。…ペンが、三本も犠牲になった原因を。
「…でさ、その時アルがなんて言ったと思う?」
「そうね…何かしら。教えてくれる?」
にこにこと満面の笑みで話しているのはエドである。そして、穏やかな笑みを浮かべながら話を聞いているのは…
「じゃあ中尉にだけ教えてやるよ!実はさ…」
…ホークアイの耳元でなにやらこそこそと話しだしたエドを見て、ペンがまた一つ折れ飛んだ。
「…なあハボック」
ものすごくドス黒い声色で話しかけられ、ハボックは全力で逃げだしたくなった。今のロイと話をするなら庭の立ち木に話しかける方がマシだと思ったが、そういうわけにもいかない。
「…なんですか」
「両手両足に発火布をつけて一斉に擦ったらどうなるかな」
冷静に考えると相当間抜けな構図ではあるが、威力の方は………
考えたくもない。とりあえずこのへん一帯は消し飛ぶだろう。
「そんな壮大な実験しないでください」
とは言ったものの、このまま放っておくと実際にやりかねない。ハボックがエドに声をかけようかと一歩踏み出すと、それより早くロイがエドのもとへと歩き出した。
「…おい、鋼の」
「…なに?大佐。仕事中だろ?」
うるさそうに歪められた眉の下、三白眼で見つめられ、ロイは爆発しそうになる己を必死に自制した。
(くそ…!いんげん豆!枝豆!うぐいす豆!この世で最も小さい豆はなんだ……!!)
ぶるぶる震えながらも、言葉を続ける。
「…中尉も仕事があるんだ。あまりいつまでも話していては迷惑だろう」
だがその言葉に反論したのは、エドではなくホークアイ本人であった。
「大佐、私はもう済んでいますので。お気になさらず」
「…だってさー。さっさと仕事に戻れば?晴れの日まで無能になっちまうぜ?」

ぶちっ。

…私は大人だ。
大総統になる男だ。
だがその前に一人の人間であるからして…


「帰れ。」


「へ?」
きょとん、として聞き返すエドの前で、ぎゅっ、と発火布を装着する。
「ふふふふふ嫉妬の焔の味、とくと味わうが良い…覚悟は良いか鋼のォオォォオォ!!」
「ぎゃーーーー!!」

どごーんっ!!

「…中尉」
「なにかしら」
「…あの人、自制できないんスから…あんまり煽らないで下さい」
「………。」
ホークアイは微笑を浮かべつつ、大暴れしている2人を見つめていた。




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葉月さんの素敵ロイアイ←エド絵に触発されて書いたものだったり。勝手に捧げさせて頂きます☆(いらんわ)

2004.7.18

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