「…っ、はぁっ!」 がば、と身を起こす。 「…くそ」 既に何度となく見た悪夢。 夢の中で、繰り返し奪われる弟。 持ち去られる腕と足。 闇色の腕に絡めとられ、アルは代価として全身を失った。闇は常につきまとい、嘲笑うかのように夢の中で襲ってくる。 闇が、恐い。 「…朝…?」 カーテンの隙間から細く刺す光を見て、エドは目を細めた。 「グッモーニン、エドっ!爽やかな朝よー!」 ずばんっ、と何の前触れもなく開いたドアに、エドはびくりと身を震わせた。 「…ウィンリィさん…?」 ぎぎぎっ、と首を回して振り返り、ジト目で睨みつける。 「お前なぁ!普通するだろ、ノックぐらい!」 「何よ今更。それよりほら!」 ウィンリィはずかずかと入ってくると、窓にかかるカーテンに手をかけた。 しゃっ。 「すっごいいい天気よ!早く起きなきゃもったいないわよ」 「……!」 闇が支配していた部屋に差しこんだ、眩しいほどの光。思わず手をかざし、片目を瞑る。 「…ああ、そうだな」 何故、気付かなかったのだろう。闇が恐くても、飲み込まれそうになっても、道を見失わずにいられたのは。 …闇すら切り裂く、明るく照らす光があったから、だと。 「もう、起きるよ」 「ばっちゃんがごはん作って待ってるわよ!アルも朝から散歩に出かけてたけど、戻ってきてるし。それにあんた、もう今日には旅立つんでしょ?」 「そーだよ。ったく、よく回る口だよな」 「なによー!」 幾筋もの光に導かれて、闇を照らされて。 道は、続いている。 ---------------------------------------------------------------- 2004.5.11 BACK |