雪が降った。
…ならば、することはただ一つ。
「「合戦じゃぁぁぁあ!!」」
「わー!!来るな馬鹿コンビ!!」
しゅばばばばっ、と手裏剣のごとき勢いで雪玉を投げてくる二人から逃れようと、新一は電柱の裏へ隠れた。
(くそ…まさか帰り道を襲われるとは!)
雪が降り、そして積もった時点で想像はついていた。間違いなくやってくると。…だがまさか、帰路を狙ってくるとは。
(迂闊…!)
「注意一秒怪我一生!!」
「!」
空から聞こえた声に、反射的に前に飛ぶ。その直後、ずだだだだんっと弾丸のような雪玉が地面をえぐった。
「くそ…このままじゃヤられる!」
体勢を立て直そうとして、ふと気付く。…もう一人は、どこへ行った?
「そぉーれぃっ!!」
感じた気配は、もはや殺気。
「どおりゃあああぁっ!!」
何も考えず、とにかく本能の危機に従ってカバンを全力で振り抜いた。
ばっかーん!!
「こっ…殺す気か…!」
…自分めがけて飛んできてたのは、大人の頭ほどもある雪玉(硬質風味)だった。直撃しようものなら、一発で極楽浄土へご案内だ。
「…いい加減にしろ!!バ快斗、アホ!!」
姿を隠したまま攻撃する二人に業を煮やし、新一が道路の真ん中で叫んだ。
「…んっふっふ、名探偵がそんなに取り乱しちゃいけないな」
「そうそう、恋人に幻滅されちまうぜ?『新一チョーかっこわるぅい』って」
不自然に混入した声色に、新一は青筋を立てた。…つくづく、人の神経を逆なでするのがうまい奴らだ。
(落ち着け…ここで激昂したら思うつぼだ)
このコンビに手を焼くのは、もはや習慣といっても過言ではない。雪が降れば合戦だ、天気のいい日が続けば雨乞いだ、台風が来れば釘と板を持って襲来する。新一にとっては、台風なんかよりこの二人の方がよっぽど恐ろしかった。
(…思うつぼだと、わかっちゃいるんだが)
やはり、やられた分はやり返したい。
「…よし、貴様等の挑戦受けて立つっ!」
そう言うと、カバンを塀の上に置いて仁王立ちになった。

「ココで会ったが百年目!!」

「そう…」
「来なくちゃな!!」
…結局快斗とのペースに巻き込まれるから、いつもいいおもちゃになるのだと。
この名探偵は、いつになれば気づくのだろうか。




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