「ハッシュドポテトってさ、なんでこんなに美味しいんだろうね」
「はあ?」
はふはふ、ごっくんと飲み下してから、が瞳をキラキラさせながら続けた。
「だって80円だよ!?100円出してお釣りが来るのに…この食感、味わい…じゅわっとにじむ芋汁…」
「芋汁ってなんだよ、じゅわっとくるのは油だろ」
「油って言うなー!!」
どうやら油という自覚はあったらしい。むくれたの表情を見ていると、軽い悪戯心が芽生えた。ハッシュドポテトをもつ右手をひょいと掴むと、そのまま自分の口へ運ぶ。
「あ、あ、あーーーー!!!」
「ん、なかなか」
ペろりと口の端を舐める。口に残る塩味は程よく、意外と芋の風味も残っていて美味い。あながちの過大評価でもないかもしれない。
「私の!!私のハッシュドポテトさま!!最後に食べようととっといた端っこのカリカリさま!!」
つかみ掛からんばかりの勢いでまくしたてる花冬を、笑いながら片手で制する。

「まーまーまーまー。落ち着いて!!」

「落ち着けるかー!!」
なんとか一発入れようと拳を繰り出し続けるをひょいひょいかわしながら、快斗が声を張る。
「明日!な、明日の帰りに買ってやるから!」
その言葉に、がピタリと拳を止めた。
「………ほんと?」
「ほんとほんと。だから勘弁、な?」
「…2枚、いい?」
「認める!」
「やったー!!」
あっという間に機嫌を直し、ぴょんぴょん跳ねながら「快斗早く帰るよ!早く明日にしなきゃ!」などと言っているに笑いがこぼれる。まったく、単純だ。
(……こーやって、オレがさりげなく「明日」の約束をとりつけていることにも気付かないんだからな)
芋に負けている内はまだまだだが、きっかけには感謝しなければならない。
心の中でハッシュドポテトに礼を言いつつ、快斗はの後を追って走り出した。



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