「かーいーとっ!朝だよ!!」
「げふっ」
ばふんっ、と容赦のない攻撃を腹に受け、快斗は目を覚ますより早く白目をむく羽目になった。
「〜〜っておい!!朝襲撃するのはやめろってあれほど…!」
「えー、だって快斗ママが入れてくれたんだもん」
「入れるなって言っただろーっ!!」
階下に向かって叫ぶも、「起きない方が悪いんでしょ!」と返されては言い返せない。ぐっ、と詰まってから、快斗は腹いせとばかりにを転がり落とした。
「いたい!」
「いきなり腹の上にダイブされる方が痛いっつーの。…で、今日は何」
そう快斗が促すと、がにっと笑って立ち上がった。
…小さい時からいつもそうで、は何か楽しいものや綺麗なもの、面白いものを見つけると必ず快斗に報告にやってくる。それはヒマワリの花だったり、買ってもらったばかりのおもちゃだったり、ヘビの抜け殻だったりと多岐に渡っていたが、そのお陰で自分も新しい発見ができる。…邪険にしているようで、実は快斗の気持ちも踊っていた。今日はなにを、教えてくれるんだ?
「昨日、夕方から雪降ったでしょ?」
「あぁ…そうだな」
結構積もってたよな、と昨日を思い出す。と一緒に散々雪合戦だの雪だるま作りだのしたのだから、間違いない。
「…朝になったらあらびっくり」
「消えてんのか?」
「そんなわけないでしょ!」
半ば冗談、半ば本気で言った快斗を一蹴すると、は思いっきり窓を開けた。

…きらきら、きらきらと。

陽の光を浴びた雪は、朝日の中で輝いていた。
「…すげー。」
「でしょ?宝石がいっぱい埋まってるみたい。びっくりして、家飛び出してきちゃった」
快斗に教えたくてさ。
そう続けたをこっそり見ると、本当に楽しそうに笑っていた。…再び雪景色に視線を戻し、快斗も微笑って言う。
「…こればっかりは、さすがのオレにも盗れねーな」
「あはは、そーだね。…ほんと、綺麗だなあ」
そうしていつまでも雪に見とれているを見ている内に、快斗の中にイタズラ心がわき上がった。…さっきの仕返しだ。

「え?」
すっかり油断していたを、とん、と一押し。
「きっ…」
「ばいばーい♪」
「きゃぁぁぁぁああっ!!」
ドサッ、と音がしてから、身を乗り出して覗き込む。下はやわらかな雪だから、怪我はないはずだ。
「つっ…めたーいっ!!」
ぷはっ、と雪から顔を突き出すと、爆笑している快斗と目が合った。
「何すんの!ちょっ…あああ背中から雪が入ってきたっ!!」
ぎゃあぎゃあ騒ぐに、快斗が笑いながら言ってやる。

「良かったな。莫迦は風邪引かないんだぜ?」

「…んのっ…!」
「うげっ!!」
ぼぼぼぼぼっ、と雪玉の連弾を受け、慌てて身を引く。それでもやまない攻撃は、快斗の部屋をも浸食し始めた。
「ばっか、やめろって!!」
「あんたも雪に埋まっちゃいなさいっ!……はっ、」
「冗談!いい加減に……はっ、」
「快斗、ちゃん、そろそろ行かないと遅刻……」

「「はっくしょんっ!!」」

「……行ける、かしら…?」
同時に聞こえた盛大なくしゃみに、半ば呆れ声で呟いたのだった。




----------------------------------------------------------------
BACK