「今年のテーマは“意外性”!!」
「…意外性……?」
あまり穏やかではない。意外性とは、一歩間違えるとマイナスにしかならないものだからだ。
「…まぁ、いい。とりあえず見せてもらおうか。その“意外性”とやらを」
そう言って、快斗は口角をつり上げた。





「…どうしたもんかなぁ」
ピンクのペンで、手帳にぐるぐると意味のない丸を書き続ける。輪の中心には、「21」の日付け。
「初めての記念日!…だから、気合い入れたいんだけど。」
はっきり言って、手料理に自信はない。誕生日といえば…のケーキは生地が爆発するし、ならばゼリーはどうだと作ってみたが、3日冷蔵庫に入れていたのに固まらなかった。ここまでくると絶望的だ。ほかの道を探すしかない。
「っても、自分が欲しいものは大抵持ってそうだし。私なんかが用意するまでもないよね…。んで快斗が買えないようなものを私が買えるわけないし。男がイチコロ、手料理も別の意味でイチコロしちゃいそうだし。こうなったら意外性で攻めるしか…」
だんだんと方向がずれてきたことに気付かないまま、はネタを探そうとテレビのチャンネルを回した。
『………を、君に』
『まぁ…!嬉しい、ありがとうございます!』
大分前に流行ったドラマの再放送だ。だが、それを見て、丸を書き続けていたの手が止まった。
「………これだ!」





「と、いうわけで、誕生日の数の薔薇を用意してみました」
にっこり笑って言われ、快斗は盛大にコケた。
「………快斗?」
心配そうにのぞき込んできたの方に手を置き、快斗はぼそりと言った。

「て、定番過ぎ……。」

「どこが!」
憤慨したように言うに、快斗はふらふらと立ち上がりながら言った。
「定番つか痛い定番だろ。何年前のドラマだよ」
「女から男にってのが意外性なの!」
「はいはい」
眉を下げ、苦笑する。…なりに、考えた結論だ。素直に喜ぶとしよう。
「サンキュ」
「ううん。ハッピーバースデー、快斗。そこにおいてあるから、今持ってくる」
木陰に走ったを見送り、快斗は頭をがしがしとかいた。…これからあちこち巡るプランだったのだが、薔薇を抱えての移動とは…なかなか恥ずかしいものになりそうだ。
「ま、いっか……」
…忘れられない誕生日になりそうだ。
天を仰いで苦笑しつつ、快斗はどこか晴れやかな気持ちでそう思った。





「実は薔薇じゃなくてカーネーションでしたー!」
「………うっわぁ…」
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