『高校生探偵、お手柄!!』
『またも高校生探偵』
『高校生探偵が暴いた真実』

…時はまさに、高校生探偵時代。





い ま の っ て セ ー フ ?







「すごいじゃん!また事件解決したって?」
「まあねー」
教室に入るなり、わっと友人に囲まれる。それを軽くいなしながら、は自分の席に着いた。
「…まぁ、僕ならもう少しスムーズに解決できましたけどね」
席に着くなり、真横の席から甘ったるく嫌みったらしい声が聞こえた。
「……それはそれは。白馬名探偵なら、どのように解決なさったんですか」
ピクピクと頬をひきつらせながら聞いたに、白馬が読みかけの洋書を閉じて向き直る。
「そうですね…」
……こいつは、いつも、私が事件を解決するといちゃもんをつけてくる。いや、本人的にはいちゃもんのつもりなどないのだろう。きっと単純に、「自分ならこうした」というのを話しているだけなのだ。それが、どんなに嫌みったらしく聞こえても。
(………問題は)
その、嫌みなこいつを。
「…さん?聞いてるかい?」
「………聞いてるよ。そんなとこにも気付けなかった自分にウンザリしてただけ。」
…………そう。
(横顔に見とれてたとは…言えない…)
私がこいつに、惚れてることが問題なのだ。






「コクれば?」
「ふざけんなっ!絶対無理!」
裏庭で喧々囂々とやりあっているのは、と快斗だった。の気持ちを知っているのは、快斗だけである。
「えーうぜー。」
「…………あの、痛くしないからさ、一発だけ殴らせて?ね?」
「いいぜ。3倍返しを約束してくれるのなら」
「ホワイトデーのお返しかっ!!」
ぜえはあと肩で息をするに、快斗がため息をつきながら言う。
「“すき”。たった二言じゃねーか。」
「されど二言。」
今度は落ち込み始めたの方をぽんぽんと叩き、快斗が微笑んで言う。
「脳内変換をすればいいんだ。“隙”とか“鍬”とか。」
「哀れみの笑みを浮かべないで…。」
しかし、それは一手かもしれない。それならばなんとか言えるような気もする。
「よし特訓!快斗、練習台に…」
「喜んで」
「ぶううううううううっ!!!!」
振り向いた先にいたのは、白馬。…の変装をした、快斗だった。
「馬鹿!!心臓に悪い!何してくれる!!」
「ちょ、悪かっ、ギブ、ギブ!!死ぬ!!絞まってる!!」
がっくんがっくんと揺さぶるに、快斗が両手を挙げて訴える。
「…はー、はー。まあとりあえず、練習としては申し分ないだろ。やってみろよ」
「うー…」
白馬の顔が、にっと口角を吊り上げて笑う。
「それとも、それすらできねーってか?」
「白馬くんの顔でそんな表情するなあああ!!」
が放った右ストレートを、華麗にかわして快斗が言う。
「これが世に言う“ツンデレ”か?あいつの前じゃツンツンしてるくせに」
「うるっさいなあ!女の子ってのは繊細な生き物なんだから!」
言いながら、快斗との間合いを取る。…確かに、これ以上ない素晴らしい練習にはなるだろう。この際、ノってみるのもありかもしれない。
「白馬くん!」
の呼びかけに、快斗が姿勢を正す。
「どうしたんだい?さん。」
「す…す、すっす、す、す、すすっ、す…す……すき焼き食べませんか!!」
「馬鹿?」
「うああああああああああああ」
一刀両断され、その場にうずくまる。わかっているのに、中身が快斗だとわかっているのに。これじゃあ本人になんて100年たっても言えないに決まっている。
「…イメトレから、始める。」
一晩かけて、と続け、はとぼとぼと歩き出した。
「なんだよ、もうお終いか?………って、」
歩き去ろうとしたを、とっさに草むらに引きずり込む。
「なっ……んー!んー!!」
声を上げようとしたの口を塞ぎ、そっと耳元で囁く。
「噂をすれば、だぜ」
(………!!)
快斗の視線を追ってみれば、確かに白馬の姿が見える。
もう帰るのだろう。鞄を手にして、裏門から出るのか、まっすぐこちらへ向かっている。
「言えるか?」
「ん〜〜〜〜!!!」
ぶんぶん首を振ったに、快斗がにやりと笑った。
「わかった、そこで見てろ」
「…………え゛。」
何を、といいかけた時には、快斗は既に飛び出していた。…“”の姿をとって。
「ちょっ………!!」
「あれ?さん。どうしたんだい、こんなところで」
(ぎゃあああああああああ!!!)
止めるより早く、(快斗)を見つけた白馬がこちらに寄ってくる。
「あのね、白馬くん…私、実は白馬くんに伝えたいことがあって」
「僕に?」
(ぎゃー!ぎゃー!!何言う気なの私!!じゃなかった快斗!!!)
“自分”が目の前にいる以上、飛び出していって止めるわけにはいかない。半泣きのまま成り行きを見守る羽目になり、は頭を抱えた。
「私ね…私………」
「私…?」
「私、白馬くんになら……このまま抱か「だぁらっしゃああああああ!!!!!!!」」
ズドン、と横っ飛びのの蹴りが快斗にモロに入った。
そのまま向かいの草むらにダイブし、快斗の襟首を掴みあげる。
「快斗?今なんていいかけた?むしろ言った?ぶっちゃけありえないよね?ねえどうしてくれるの?あんた自分の立場に置き換えてご覧?告白の時にあんなこと言われたらどう?あんた的にはいまのってセーフなわけ?」
の矢継ぎ早の問に、快斗は一言で返した。

「…アウトだな。」

「こっ………!!!」
絞め殺したい、と心の底から思ったが、今はこいつにかまけている暇はない。急いで草むらから飛び出して、白馬の元へと赴く。せめて言い訳くらいはしておきたい。
「あのね、白馬くん!!今のは快斗で……」
「うん、知ってたよ。」
「そう、知ってたの。だから今のは………って、え?」
白馬の言葉に、がきょとんとする。
「伊達に君の推理を毎日指導しているわけじゃない。これくらいは当然だろう?」
「…は、はは。そう、ですね……」
…やっぱり、嫌味っぽい。馬鹿にされている気がする。…けれど。
「ところで、僕に何か用があったんじゃないのかい?」
「あ…」
………けれ、ど。
「す…す……すっ……」
「す?」
「す……す、き……すき、焼き!すき焼きでも、今度一緒に食べに行かない!?」
「ええ、喜んで。」
真っ赤になっているに、白馬はにこりと微笑んで言った。
「あ、う、うん…」
大丈夫、ばれてない?
ほっと息をついたの横を、すれ違いざまに白馬が言う。
「そのときまでには、言えるようになっていて下さいね」
「え」
ばっ、と振り向いた時には、既に白馬は裏門を出て行くところで。
「また……やられ、たっ……!!」
読まれた、先を行かれた。
「…ま、いいじゃねーか。また特訓、付き合ってやるから」
ぽんぽん、との頭を叩いて言った快斗に、きっと涙目で睨みあげる。
「誰のせいだと思ってんのーーーーーーーっ!!!」
一際大きな悲鳴と、なにやら痛そうな音が裏庭に響き渡った。



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