ブルー・ワンダーの巻 2





「オレが聞きたいのはただ一つ。オメーが今回、どっち側につくかだ」
「どっちにもつきません。喧嘩はサシでやりなさいっ!!」





「やっほー、!」
不意に後ろから声を掛けられ、きょとんとして振り返る。今日はちょっと遠くまで足を伸ばしていただけに、予想外だった。
「?……あ、蘭!園子!久しぶり!」
懐かしい顔を見つけ、はぱっと笑顔になった。中学を卒業してから、ほとんど会う機会がなくなってしまったのだ。
も買い物?」
「うん。蘭たちも?」
「そんなトコ。ま、お荷物つきだけどォ?」
「ちょっと、園子!」
「おにもつ…?」
園子の視線を追っていき、ようやく足元の少年に気が付いた。ランドセル姿で園子たちと共に行動している彼には、違和感を感じざるを得ない。
「えーと、このこは…?」
「江戸川コナン君。うちで預かってるの。帰り道たまたま会ったから、一緒に来たのよ。今帰ってもコナン君、一人だしね」
「へえー…?」
小柄な方だろうか。大きめの眼鏡が特徴的で、蒼い瞳は聡明そうだ。…意識せず、随分長いことコナン君を見つめてしまっていたらしい。慌てた様子で蘭の後ろへ隠れてしまった。
「ありゃ、嫌われちゃったかな」
「そんなことないわよ。コナン君、どうしたの?」
「ごめんねー、コナン君。私、っていうの。よろしくね」
……あ、じゃなくて、えと、姉ちゃん。よろしくね。ボク、江戸川コナン」
おそるおそる、といった感じで手を差し出してきた彼の手を掴んで、は不意にその少年をどこかで見たことがあるような気がした。ずっと、ずっと、前に……いや、つい最近だっただろうか?
「ねえ、コナン君。前にどこかで会ったことなかったっけ?」
「え!?い、いや、ううんっ、今日が初めてだよ!!!初めましてだよ、姉ちゃん!!」
必要以上に強調して言われ、きょとんとする。
「…そう、だったかな?」
この声、どこかで聞いたような。…あまり良いとは言えない記憶力で必死に手繰り寄せ、ようやく思い出す。
「ああ、わかった!」
「ええっ!?」
やけに驚いたコナンにが驚きつつ、蘭と園子に向かって言う。
「この前、映画館の前でひったくり見たの。そのとき、近くにコナン君がいた」
そして快斗は、その場から逃げるように撤収していた。…顔見知りだったのだろうか?このコナン君と。それにしたって逃げなくてもよさそうなものだが。
「え?あ、あー…うん、いたよ」
…今度は、妙に安心した表情だ。一人百面相の様がおかしくて、つい吹き出してしまう。
「やだ、あんたもいたの!?あのひったくり犯、わたしのカバンひったくったのよ!ねえ蘭!」
「そうそう。それを次郎吉おじさんが捕まえてくれて…あ、そうだ園子、にも例のメール見せてあげたら?」
「メール?」
「そうねー!ね、、これ見てこれ!すごいでしょ!」
何のことだかわからずに聞き返したに、園子が携帯画面を突きつけた。…近すぎて、見えない。
「ちょ、なに?えーと…『貴方の提案快く承ります…決行は10月12日20時、その前夜に下見する無礼をお許し下さい…怪盗キッド』……園子、これ…」
「そう、キッド様からのお返事よ!あのときひったくりをつかまえてくれた次郎吉おじ様の挑戦状を、受けて立つって!」
(あーあ…探くんが派手に煽ったせいだろーなー…)
なんでわざわざ自分から危ない橋を渡ろうとするのだろうとため息をつきながら思う。…勝手にやってくれと突き放した自分にもちょっと責任があるかなあとか思ったりもするが、へたに動いて快斗や白馬に迷惑をかける羽目になっては困る。
「ね、も一緒にキッド様を見に行かない?」
「え、私は」
「いいじゃない!久しぶりに三人そろったんだし、行こうよ!」
「…………はは……」
蘭や園子と会えたのは嬉しい。また会う約束も嬉しい。……だが。
(関わり合いに…なりたくなかったんだけどなぁ……)
困ったように笑っているを、コナンだけが不思議そうに見ていた。




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