ブルー・ワンダーの巻 3





「蘭ーん!ー!!キッド来た?」
「ううん、まだ…」
「来てないよー。」
次郎吉と共にハーレーで現れた園子に、蘭とが応える。次郎吉の姿を認めた中森がこちらへやってくるのを見ながら、は不意にコナンの姿が見えないことに気付いた。
(あれ…?今までここにいたのに)
この人ごみではぐれたら、確実に迷子になってしまう。きょろ、と周囲を見渡すと、ちょっと離れたところにいるのが見えた。
「あ、コナ…」
声を掛けようとして、とまる。…コナンが、誰かと話しているのが見えたのだ。そして、その誰かというのが。
(探くん…?)
「また会ったね、小学生探偵君?」
ウィンクをしながら言われ、コナンが明後日の方へ視線を飛ばす。
「…相変わらずキザだな。まぁ、あいつを追ってりゃ、会うのは時間の問題だろ」
「おや、つれないな」
白馬と話しているコナンは妙に大人びていて、白馬も小学生相手とは思えない話し方だ。話しかけるに話しかけられず、どうしたものかと戸惑っていると白馬の方がこちらに気付いた。
「こんばんは、さん。今回は観客として傍観ですか?」
ごく普通に話しかけられ、も慌てて返した。
「あ、うん…蘭、と園子に誘われて……」
ー!次郎吉おじ様のワゴンに行くよー!」
園子の声に、白馬もぴくりと反応する。
「…ご一緒しても?」
「いいと思うけど……」
先ほどまでここにいたはずのコナンを目で探すと、もう既に園子たちの元へ戻っている。…一体、なんだったのだろう。なんだかあの子には、まだ隠されている部分があるような気がする。
(なんて、私が考えても仕方ないことだけどさ)
きっと、白馬とも何かの顔なじみなのだろう。
さっさと自分の中で答えを出すと、は白馬と共に園子たちの元へと急いだ。





「おいおい、館内には誰もいないじゃないか!?」
「今までがおり過ぎたんじゃよ!これなら彼奴が誰かに変装して侵入したとしても一目瞭然じゃろ?」
中森に警備システムを説明している次郎吉の横で、山のようなテレビ画面を見ては圧倒されていた。
(…快斗、大丈夫かなあ……)
大丈夫だとは思う、けど…万が一のことがあったりしたら、私は……?
だがそんな不安を払拭する間もなく、コナンが「来たみたいだよ」と小さく呟いた。…画面の一つに、大きな月にその姿をさらす鳥の姿が映っていた。
「か、怪盗キッド!!!」
場が一気にざわめき立つ。も食い入るように画面を見つめた。…快斗だ。
「おい、どれだ!?この映像、どのヘリから撮ってんだ!?」
「な、7番機です!!場所は博物館の裏手かと…」
「裏だとォ!?」
それを聞いた中森が、ワゴン車から飛び出してゆく。それを追うように、コナンも走り出ていった。
「あ、コナン君!?」
「蘭、私が行く!」
自分が行ったところで何かの力になれるとは言い難いが、この場でテレビの向こう側の快斗を見ているだけというのはなんとも忍びない。自分だけで出て行くのは躊躇われたが、コナンが飛び出したことで出て行きやすくなった。
コナンを追うように飛び出したに、蘭がまた驚いて声を上げる。
「ちょっと、!?」
「大丈夫ですよ。彼…キッドは、今夜は下見だと言っていました。それならば盗ることはあり得ないでしょう。さんも、ここより…彼、いや、キッドの近くにいたいのでしょうし。現地の視察はコナン君とさんに任せて、僕らはここにいましょう。無用に人を増やしては警察の邪魔になるだけです」
完全に中森を数から外している白馬の言葉に蘭が一瞬唖然とするが、納得するように頷いた。
「それにしても、…最初は乗り気じゃなかったのに…そんなにキッドのこと、近くで見たかったのかしら。まぁ、コナン君にはが付いてるから大丈夫よね」
蘭の言葉には返さず、黙って踵を返す。きり、と微かに胸が痛むのは無視し、再びテレビ画面を凝視した。
(逆ですよ)
そうして、口には出さず、そっと心の中で呟く。…姫を守ってくださいね、小さな騎士君?




----------------------------------------------------------------

BACK