『キッドから予告状が届きました!!』 テレビから聞こえてきた、アナウンサーの興奮した声。 はすぐさまそれに全神経を集中させた。 「…明日か…」 テレビで流れた内容を紙に書きとめ、はそれをしばし眺めた。 「えーと…『明日の晩九時、田崎家の“闇色の月”を頂きに参上する 怪盗キッド』…ね」 ぱふっ、とベッドに寝転がりながら、頭の中を整理する。 (田崎家…確か今、特設会場つくって、自慢の宝石の展覧会やってたっけ…) そこの目玉となっているのが、『闇色の月』。漆黒の色をしたビッグジュエルで、昨日辺りも誰かが見に行ってきたと自慢していた。 「さて、と」 むくり、と起き上がり、服のしわを伸ばす。 「いっちょ行ってみますか」 それほど離れた場所ではない。は制服のまま、鞄を掴んで下見に出かけた。 「入場料!?」 「はい。学生の方は1500円となっております」 (映画見られるよ…なんだその値段は) 金持ちなんだから、もういいだろうに。この上まだお金をとろうという強欲さに少し呆れた。 「やっぱいいです」 本当は中を見ておきたかったんだけど… 未練たらしく振り返りつつ、会場を後にする。仕方なく、会場の周りを見て回ることにした。 「近くに高いビルは…いや待てよ、毎回飛んでくるとは限らないし…や、それより盗った後のことを考えるべきかな…」 成功することを前提で考えていると知ったら、中森警部は怒るだろうか。そんなことを考えながら歩いていると、前から似たようなことを呟きながら歩いてくる人物を見付けた。 「いや…今夜は風も強く夜間飛行には向いていない…となるとあとは…」 その姿は、日頃見慣れたものだった。 「白馬くん!」 「え?あ…さん!?」 前から歩いてきていたのは、同じクラスの白馬探。確か、彼もキッドを捕まえたいと思っている人物の一人だ。 「どど…どうしてここに?」 わたわたと白馬が慌ているのには気付かず、はにやりと(心の中で)笑った。白馬は警視総監の息子だ。これは…イケる! 「ね、白馬くん!」 「え?」 「私もキッドを捕まえたいと思ってるの!今夜…一緒にいてもいい?」 「えぇっ!?」 (それは…色々マズいような気もするんだけれど…でもさんと…) 密かな想い人に、きらきらとした瞳で見つめられれば断れるはずもなく。 「あ、あぁ…いいよ」 気付けばイエスの返事をしていた。 「やった!白馬くん大好き!」 「えぇっ!?」 またもや慌て始めた白馬のことは全く眼中になく、の視線は既に明後日。 「よーし…絶対捕まえてやるんだからー!!」 「…何で白馬のヤローとがつるんでるんだよ」 スコープから目を離し、おもしろくなさそうに呟く人物が一人。 言うまでもなく、快斗である。 妙にむしゃくしゃする気持ちを押さえつつ、スコープを放り投げて横になる。これ以上見ていたくなかった。 「『絶対捕まえてやる』ねぇ…」 寝返りを打ち、空を見上げる。 「…捕まえられるものなら、捕まえてみろよ」 挑戦的に言い放った顔は、自信に満ちていた。 決戦は明日。 戦いの火蓋は、すでに切って落とされていた。 ---------------------------------------------------------------- 2004.5.3 → BACK |