プロローグ





「げっ」
突然吹いた強風は、ハンググライダーがバランスを崩すのには十分すぎる風だった。





ずがしゃっ!!
「!?」
いきなりした大きな音に、はギョッとして振り向いた。ここはマンションの40階。不審者も入れないだろう、と網戸にしていたのだが…その網戸を突き破って、人が飛込んできていた。
「ぎゃぁぁぁ!!なななななに!?」
「…って〜…」
むくり、と起き上がったのは、白いマントにシルクハット、全身白ずくめで…
「…白ずくめの男?」
「他に言い方はねーのかよ」
言って、顔を上げたのは…
「快斗!!」
「…え」
いきなり本名を呼ばれ、快斗は度肝を抜かれた。慌てて相手の顔を見ると、
「うっわ……!」
相手は、同級生のだった。
「な…な…」
ヤバい、ヤバいヤバいヤバい!!
快斗が頭をフル回転させていると、があんぐりと口を開けたまま聞いてきた。
「…なんで、怪盗キッドの真似なんかしてるの?」
「…へ?」
一瞬きょとん、とするが、すぐに笑顔で返した。
「そーなんだよ!いやぁ、やっぱり本物には敵わないや」
「はいはい、じゃあさっさと出てってちょうだい。年頃の女の子の部屋に長居しないで」
「へいへい」
窓際まで引っ張っていくと、快斗は再びハンググライダーを開いて飛び立った。
「じゃーなー」
言いながら飛んでいく後ろ姿を見送り、窓をピシャリと閉め…はへにゃりと座り込んだ。
「…なんて言うわけないでしょーが、バ快斗」
今世間で騒がれている怪盗は、同級生の男の子。
さて、波乱の幕開けです―――




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2004.5.2



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